【肥満】 世界で肥満は増え続けている 肥満症の薬も続々と開発されている

世界では 10億人 が肥満です。今後 15年 で 20億人に増えると言われています。最近、GLP-1製剤 という画期的な抗肥満薬が発売されました。しかし、精神症状や自殺リスクの懸念があるとして、欧州と米国の当局が調査を開始しています。臨床試験と現実のギャップについても検討します。

ポイント

  • 肥満は増え続けている
  • 新しい抗肥満薬が続々と開発されている
  • 欧州と米国は GLP-1製剤 の安全性を再評価している

はじめに

世界の肥満はどこへ向かうのだろうか?

今回は世界の肥満の未来と、新しい抗肥満薬について考える。

肥満は増え続けている

世界で肥満は増え続けている。肥満は先進国だけでなく、発展途上国でも増加している。途上国では、低体重と肥満の二極化が問題になっている。

各国の肥満率 出典:
Obesity - Our World in Data

肥満は世界人口の 15% を占めている。今後も増加して 2035年 には世界人口の 25% になると予想されている。

世界人口の肥満と過体重の割合の予想、縦長のグラフ.png (800×1120) 世界人口の肥満と過体重の予想、縦長のグラフ.png (800×1120)
World Obesity Atras 2023 をもとに作成

肥満は世界で一番多い病気になり、抗肥満薬の売り上げは計り知れない大きさになる。これからも新薬の開発競争は加熱していく。

GLP-1製剤 は ブロックバスター

画期的な新薬のことを、ブロックバスター と呼ぶ。従来の病気の概念を突き崩すという意味がある。

ウゴービ と ゼップバウンド は、まさに現代のブロックバスターといえる。

開発中の GLP-1 製剤

2024年 現在、ウゴービの内服薬の試験が行われている。内服薬が発売されれば、注射薬よりずっと使いやすくなる。

同効薬の開発も続いている。

世界 日本 用法 体重減少率
ウゴービ(内服) 一部試験終了 試験中 内服 -15.1 %
レタルトルチド 試験中 試験中 注射 -8.7 ~ -24.2 %
カグリリンチド 試験中 試験中 注射 -6.0 ~ -10.8 %
 Peptides. 2024 Mar:173:171149. をもとに作成

他にも、スルボデュチド・ペムビデュチド・マズドデュチド などの試験が行われている。

GLP-1製剤 は 世界中 の製薬企業が精力的に開発していて、いずれ複数のラインアップが揃う日が来る。

抗肥満薬は本当に安全か?

ウゴービ と ゼップバウンド は、世界で初めて安全な抗肥満薬という評価を手に入れた。特に過去の薬で多かった精神神経系の副作用がないことが画期的だった。

参考:過去に多くの 抗肥満薬 が、副作用で販売中止になった

しかし、2023年7月 欧州医薬品庁(EMA)は GLP-1製剤 に関連した自殺企図・自傷行為が 150件以上ある として、安全性の再評価を開始している。

さらに、 2024年1月 アメリカ食品医薬品局(FDA)も、ウゴービ と ゼップバウンド を含めた GLP-1製剤 全般について、安全性を再評価している と発表した。内容は、脱毛症・誤嚥・そして 自殺念慮 である。

公的機関が調査を開始しているので、それなりの数の健康被害が起こっている。

臨床試験と現実のギャップ

臨床試験は、特殊な状況下で行われる。

ウゴービ と ゼップバウンド は、臨床試験は両方とも精神疾患のある人を除外して行われた。

試験では精神疾患を悪化させないというデータが得られているが、それはかなり意図して得られた結果といえる。

発売後は精神疾患がある人も使用している。精神疾患のある人は当然、副作用も発症しやすい。

また、臨床試験は 数千 ~ 1万人規模 で行われたが、薬剤発売後の使用者数ははるかに多い。従って、副作用を発症する人も多くなる。

GLP-1製剤 の未来

新薬の安全性はまだ未知数である。本当の安全性は、発売後に時間とともに確立されていく。

GLP-1製剤 は既に世界で広く使用されており、承認が取り下げられることはないと思うが、今後は安全性について様々な注意喚起がされるだろうと書き手は考えている。

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