【血圧】 血圧 は 160 で本当に大丈夫?

血圧にはいくつかの目標値があります。120 は理想の理想値・130 は理想の値・140 は高血圧の人の現実的な目標値です。血圧は 家庭と診察室・朝と晩・夏と冬 でも変動します。これから、血圧を下げる 食事・運動・薬 の効果を紹介します。

ポイント

  • 血圧は低いほど病気を予防できる
  • しかし副作用も増える
  • 理想は 130 / 85 未満

はじめに

血圧は、いくつまで下げれば良いの?

心臓病や脳卒中を予防するうえで、血圧の管理は一番大切である。

日本では実に 4,300万人 が高血圧と言われていている。読者のみなさんでも血圧の薬を飲まれている方も多いのではないかと思う。

血圧の目標値はいろいろあり、いくつまで大丈夫か分かりにくいと感じることがある。

血圧 は 160 まで大丈夫?

血圧には、さまざまな目標値がある。

収縮期 / 拡張期
正常血圧 120 / 80 未満
正常高値血圧 130 / 80 未満
高値血圧 130 / 80 以上(いずれか)
高血圧 140 / 90 以上(いずれか)
高血圧治療ガイドライン 2019 をもとに作成

これだけ目標値があると、一体いくつまで下がれば良いのかよく分からない。

また 2024年4月 から、検診で異常値が出た場合の受診推奨の基準が変更になっている。

受診推奨基準
血圧 160 / 100 以上(いずれか)
血糖 126 以上  または HbA1c 6.5 以上
脂質異常 LDLコレステロール 180 以上
全国健康保険協会 の 受診推奨基準 をもとに作成

血圧は 160 を超えたら受診が推奨されるように変更された。以前の基準と比べるとずいぶん基準が緩くなった。

血圧は 160 まで本当に大丈夫なのだろうか?

血圧 160 以上 は 危険!

まず、検診で 血圧 160 以上 のときに受診が推奨される根拠はこちらなる。

これは日本人の大規模な検診のデータを分析したもので、血圧と死亡率の関係をみると、血圧が160までは変化せず、160 以上 になると死亡率が上昇している。

これはつまり、血圧が 160 以上だと高血圧に関連した病気で亡くなる人が増えることを示している。

高血圧に関連した病気には、脳卒中・心筋梗塞 などがある。

要約すると、血圧 160 以上は 脳卒中や心筋梗塞で命に関わるから、今すぐ下げましょうということになる。

血圧 140 ~ 160 はどうなのか?

では、血圧は 160 以下であれば良いのだろうか?

2022年 日本人の死因

日本人の死因の変化を表したグラフ.PNG (702×498)
出典:厚生労働省 令和4年 人口動態統計

2022年の日本人の死因

割合
がん 24.6 %
心疾患 14.8 %
老衰 11.4 %
脳血管疾患 6.8 %
肺炎 4.7 %

日本人の死因で一番多いのはがんで、それに心疾患と老衰が続いている。

このうち高血圧が関わる病気は 心疾患 と 脳血管疾患 で、両方を合わせて 20% 少し になっている。

血圧 が 160 以上 になると心疾患と脳血管疾患が急増して、全体の死亡率まで押し上げてしまうことを示している。

血圧を 160 未満 は意味がない?

では、血圧を 160 より下げる必要はないのだろうか?

患者さんから 「血圧が 160 以下 なら大丈夫ですか?」と聞かれた場合、少し違ったニュアンスで質問を受けている場合が多い。

「自分は血圧が関係した病気で亡くなりますか? それ以外の病気で亡くなりますか?」 「血圧が高いですが、脳卒中や心筋梗塞は起こしませんか?」

もしあなたが1の意味合いで訪ねている場合、血圧は 160 で大丈夫である。即ち、飲んでも寿命に関係しない可能性の方が高い薬は飲む必要がない。

ところが、多くの人は2のニュアンスで尋ねている。つまり、直接寿命に関わらなくても、脳卒中や心筋梗塞は怖い病気なので予防したいと思っている。

実際のところ脳卒中や心筋梗塞は怖い病気だけれども、現在は治療技術も進歩していて、発症しても助かることが多い。

しかし何らかの後遺症が残ることも多い。心筋梗塞の場合は体力が落ちて無理ができなくなるし、総卒中の場合は麻痺や言語障害が残ることがある。

多くの医師は、健康寿命を伸ばすために血圧は 140 未満 を目指した方が良いと考えている。

理想は 130 未満

血圧は低ければ低いほど、脳卒中や心筋梗塞を予防できることが分かっている。具体的には、130未満が理想の値になる。

血圧を 160 から 130 に下げると、だいたい 2~3割 脳卒中や心筋梗塞を予防できる。

わずか2~3割、されど2~3割である。少なくとも 100% ではないので、なかなか下がらなくても必要以上に心配したり落ち込んだりする必要はない。

120 未満 は 理想 の 理想値

では、120 未満 は何を意味するのだろうか?

欧米の研究では、血圧は 120 / 80 未満 まで下げるとそれだけ心血管病が予防できる ことが分かっている。

しかし、120 / 80 未満 まで下げると予防効果と同じだけ副作用も生じる。

低血圧による副作用は、めまい・起立性低血圧・脳梗塞・腎機能の悪化 などがある。

日本人の場合は欧米人よりそもそも心血管病の頻度が少ないので、血圧を 120 未満 に下げるメリットが少ない可能性がある。

また、高血圧はそれだけでは自覚症状がなく日常生活にも不便は感じないので、予防のために薬を飲んで副作用が出ることは許容されない。

従って、現実的な目標値は 130 ~ 140 ぐらいになる。

血圧は変動する

血圧はいろいろな理由で変動する。この変動が、血圧の評価を難しくしている。

白衣高血圧

家では血圧が高くないのに、病院やクリニックを受診すると高くなることがよくある。

白衣を見ると緊張して血圧が上がるので、白衣高血圧と呼ばれる。

病院と家庭での血圧が違って記録される場合は、家庭の血圧を優先 する。

朝と晩の血圧

血圧は朝と晩でも変動する。

朝は起きてから活動に向かうので、交感神経という神経が働いて血圧が上昇する。

交感神経は全身の血管を収縮させて、さらに心臓のはたらきを高めて脳の血流を増やす。脳の血流が良くなると、頭の回転が良くなる。

朝の血圧は誰でも高くなるが、基準値を超えて高くなる場合を 早朝高血圧 という。

脳卒中や心筋梗塞は明け方に起こりやすい。早朝高血圧を管理することはとても大切になる。

早朝高血圧に対して、最近は効き目の長い血圧の薬を夕方に処方することが増えてきている。

季節による変動

血圧は季節でも変動する。

冬になると体温を逃さないために、やはり交感神経が働いて手足の血管を収縮させて血圧が高くなる。

冬に血圧を下げることは大切だけれども、下げすぎると夏に低血圧を起こすことがある。

人によっては、季節ごとに血圧の薬を調整する必要がでてくる。

実際はどうなのか?

実際のところ、血圧は変動をみながら最適な値を探すことになる。

書き手の感覚では、140 以上が1度あるからすぐに薬を増やすということはない。

150以上 が何回かある場合は、血圧の薬を増やすことを勧める。

また、全体的に 140台 後半 が続いているときも、やはり薬を増やすことをすすめる。

日々の生活で薬が増えることは大変なことなので、1回の受診で決めることはなく、何回か受診を続けて話し合っていく。

食事と運動と薬

薬の話が先行してしまったが、高血圧を改善する3本柱は 食事・運動・薬 になる。

まず、食事が血圧に与える影響について検討する。

もちろん塩分を控えることが大切になるが、それが実際にどれくらいの効果があるのか紹介する。

次に、運動が血圧を大きく下げる効果を紹介する。

後半では、いろいろな種類がある血圧の薬について、代表的なものを紹介する。

次の記事 前の記事