【肺炎】 肺炎球菌ワクチンは、肺炎を 45% 予防する

日本では肺炎球菌ワクチンは小児と高齢者に定期接種となっています。肺炎球菌ワクチンには、全ての肺炎を 45% 予防するという大きな効果があります。今回は、肺炎球菌の効果を証明した日本の論文を紹介します。

ポイント

  • 肺炎球菌ワクチンは、全ての肺炎を 44.8% 予防
  • 肺炎球菌肺炎を 63.8% 予防

はじめに

肺炎球菌ワクチンは、どのような効果があるのだろうか?

日本では、23価型肺炎球菌ワクチンは 65歳以上で1回 定期接種 になっている。多くの方が接種を受けていると思うが、どのような効果があるのか疑問に思う人もいるかもしれない。

ワクチンには上記のポイントに書いた通り、肺炎を 45 % 予防するという大きな効果がある。2014年から、肺炎球菌ワクチン は65歳以上 の高齢者に定期接種になり、肺炎による死亡はずっと減っている。

日本人の死因の変化を表したグラフ.PNG (702×498)
出典:厚生労働省人口動態統計2022年

今日はこのワクチンの効果を証明した、日本で行われた臨床試験の論文を紹介する。

※ 2024.4.1 追記

高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種は、以前は5歳おきに行われていたが、2024年4月 以降は 65歳 の人 のみが対象になった。

23価型肺炎球菌ワクチンは、肺炎を予防し高齢者施設の入居者の生存率を改善する ー 二重盲検ランダム化比較試験

Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial

Takaya Maruyama et al.

BMJ. 2010 Mar 8:340:c1004

https://www.bmj.com/content/340/bmj.c1004
Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial

Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial

Objective To determine the efficacy of a 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine in people at high risk of pneumococcal pneumonia. Conclusion The 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine prevented pneumococcal pneumonia and reduced mortality from pneumococcal pneumonia in nursing home residents.

日本で行われた 肺炎球菌ワクチン の効果を証明した試験

目的

肺炎球菌肺炎の高リスク患者に対する肺炎球菌ワクチンの有効性を検討する

対象

日本の高齢者施設に入所している 1,006人

方法

  • ランダムに肺炎球菌ワクチン接種群(502名)と偽薬群(504名)に割り付け
  • 肺炎は臨床症状と胸部レントゲン・CT検査で診断
  • 肺炎球菌肺炎の診断は、血液培養・胸水・痰から菌の検出、もしくは尿中抗原で行った
  • 複数回肺炎を発症した場合は、最初の1回のみカウント

一次エンドポイント

  • 肺炎球菌肺炎
  • 全ての肺炎

二次エンドポイント

  • 肺炎球菌肺炎による死亡
  • 総死亡

結果

研究期間は 2006年5月 ~ 2009年3月
全ての患者を少なくとも 26ヶ月 以上観察

参加者の特徴

ワクチン群 偽薬群
年齢 84.7 歳 84.8 歳
男性 22.1 % 21.6 %
体重 43.8 kg 43.8 kg
インフルエンザ
予防接種率
99.6 % 99.2 %
論文の表 をもとに作成

ワクチン接種群と偽薬群の患者背景に明らかな差はなかった

167人(16.6%)が肺炎と診断
141人(14.0%)が入院(接種群で 52名、偽薬群で 89名)

ニューモバックス、論文図2、肺炎球菌肺炎の発症率の比較.png (549×342)
出典:
BMJ. 2010 Mar 8:340:c1004

肺炎球菌肺炎は、ワクチン接種群 2.8%、偽薬群 7.3% 発症
ワクチンは発症率を 63.8% 減少させた

ニューモバックス、論文図3、全ての肺炎の発症率の比較.png (551×344)
出典:
BMJ. 2010 Mar 8:340:c1004

肺炎球菌以外の起因菌も含めた全ての肺炎も、ワクチン接種群で有意に少なかった
ワクチンは 、全ての肺炎 を 44.8% 減少させた

肺炎球菌肺炎による死亡 は、偽薬群で35.1%であったのに対し、ワクチン接種群では1例もなかった

その他の原因(脳血管障害・虚血性心疾患・腎不全・老衰など)を含めた死亡は、ワクチン接種群と偽薬群で差がなかった。

結論

23価型肺炎球菌ワクチンは、高齢者施設における肺炎と肺炎による死亡を減少させる

筆者の意見

研究が行われた当時、ウイルス = 予防接種で予防、細菌 = 抗生物質で治療 という感覚があったから、細菌感染症をワクチンで抑えるという結果は新鮮だった。

肺炎球菌ワクチンには、23価型肺炎球菌ワクチンの他に、13価型肺炎球菌ワクチンがあり、こちらは小児の定期接種になっている。

こちらは髄膜炎などの予防に効果があるほか、間接的に成人の肺炎を予防している ことが示されている。

※ 2024.4.1 追記

2024年4月 から、小児の肺炎球菌ワクチンは 13価型肺炎球菌ワクチン(プレベナー13)から 15価型肺炎球菌ワクチン(バクニュバンス)に変更されている。

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