【スタチン】 奇跡の薬「スタチン」を発見したのは日本人
スタチンは奇跡の薬と呼ばれています。スタチンは、多くの人を心臓病や脳梗塞から救ってきました。スタチンを発見したのは日本人です。これから奇跡の薬の効果について、連載で紹介します。

訃報
遠藤 章 博士 は 2024年 6月 5日 に 90歳 で永眠されました。
世界中の多くの人を救われた業績に改めて敬意を表するとともに、心よりお悔やみ申し上げます。
2024年 6月 11日
ポイント
- スタチンを発見したのは日本人
- スタチンは世界の心臓病を大きく減らした
- 高脂血症から脂質異常症へ
はじめに
スタチンは奇跡の薬と言われる。
スタチンは第2のペニシリンとも言われる。
米国人の死因
出典:CDC Provisional Mortality Data — United States, 2022
米国人の死因のトップは、長らく心疾患が占めている。2022年時点でも心疾患が一番も多い。しかしその数は大きく減少している。
上から 心疾患・がん・脳卒中
出典:
Jiemin Ma et al. JAMA. 2015;314(16):1731-1739
心疾患の減少に寄与したのは、
- 血圧の管理
- カテーテル治療や心臓バイパス手術など治療法の発展
- スタチン
である。
スタチンを発見したのは日本人

スタチンを発見したのは日本人で、遠藤 章 博士はノーベル賞に最も近い日本人の一人と言われ続けている。
スタチン発見までの道のり
菌類に親しみを持つ
遠藤博士は秋田県の田舎に生まれた。小さい頃から、味噌づくりやきのこ採取を通して菌類に親しんだ。
カビから抗生物質を発見したフレミングを敬愛する博士は、菌類から新たな薬を発見したいと夢を抱く。東北大学の農学部を卒業し、三共(現 第一三共)株式会社に入社する。
米国人と肥満
米国へ留学の機会を得た博士は、彼の国の豊かさと肥満の多さに驚く。そして、将来は脂質を下げる薬が必要になると考えた。
創薬への執念
帰国後、6000種類 もの微生物を調査し、ついに脂質を下げる物質を発見する。動物実験で生じた思わぬ副作用、そして社内の不協和など、次々と現れる困難を乗り越えていく。
スタチンは、難治性の遺伝疾患に対して劇的な効果を上げる。
博士が発見した物質は、やがてその真価を見出され、世界中の製薬企業が類似薬の開発に乗り出す。
続けて行われた大規模臨床試験で、驚くべき効果が明らかになっていく。
このストーリーはご自身の著書、「新薬スタチンの発見」に詳しい。

脂質異常症
高脂血症から脂質異常症へ
脂質には体にとって良い働きをするものもあるので、最近は 高脂血症 ではなく 脂質異常症 と呼ぶ。
脂質の中で、LDLコレステロール は、動脈硬化を引き起こす悪い存在とされる。別名、悪玉コレステロール と言われる。
一方で、HDLコレステロール は動脈硬化を抑える作用がある。こちらは、善玉コレステロール と呼ばれる。
スタチンは、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増加させる。そして、心臓病や脳梗塞を予防する効果がある。
全11回の連載
次回から、LDLコレステロール と それに対するスタチンの効果について、全11回で連載する。
前半6回は、初発の病気を予防するスタチンの効果、いわゆる 一次予防 に焦点を当てる。
後半は病気の再発を防ぐ効果、二次予防について検討する。
奇跡の薬スタチンの効果について、書き手もともに学んでいきたいと思っている。