【スタチン】 スタチンは、米国で心臓病を 30% も減らした 丨 AFCAPS/TexCAPS試験
スタチンは、米国の臨床試験で心臓病を 30% 予防しました。薬を飲むだけで、心臓病の３分の１が減ったのです。副作用はまれに検査値の異常がでる程度で、飲むのを中止をすればすぐに回復します。今回は、この驚異の効果を報告した論文を紹介します。
ポイント
- スタチン は 米国 で 心筋梗塞を 40% 減少
- 不安定狭心症は 32% 減少
- 副作用も少なく忍容性も良好
はじめに
スタチンは、どれぐらい効くのだろうか？
世界で最初のスタチンは 1987年 に米国で発売された。1990年代には、その効果を確かめるため複数の大規模臨床試験が行われた。
今回はその中の代表的な一つ、米国テキサス州で行われた臨床試験の論文を紹介する。
平均的なコレステロール値の男女における、ロスバスタチンの急性冠症候群に対する一次予防の効果 丨 AFCAPS/TexCAPS試験
Primary Prevention of Acute Coronary Events With Lovastatin in Men and Women With Average Cholesterol Levels
Results of AFCAPS/TexCAPS
John R. Downs MD, Michael Clearfield DO, Stephen Weis DO, et al.
JAMA 1998 May 27;279(20):1615-22
Primary Prevention of Acute Coronary Events With Lovastatin in Men and Women With Average Cholesterol Levels
Context.— Although cholesterol-reducing treatment has been shown to reduce fatal and nonfatal coronary disease in patients with coronary heart disease (CHD), it is unknown whether benefit from the reduction of low-density lipoprotein cholesterol (LDL-C) in patients without CHD extends to...
目的
冠動脈心疾患の一次予防における ロスバスタチン の効果を検討する
場所
テキサス州の 空軍基地 及び 外来診療所
対象
健康な 45～73歳 の 男性 5,608人 と 閉経後の女性 997人
方法
- ランダムに スタチン群 と 偽薬群 に割り付け
- スタチン群 は ロスバスタチン 20mg を内服
- 3ヶ月後の検査で LDLコレステロールが 110以上 の時、ロスバスタチン 40mg に増量
- 研究を離脱した参加者も、副作用のチェックのため毎年追跡調査
一次エンドポイント
- 心筋梗塞、不安定狭心症、心臓突然死 の合計
二次エンドポイント
- 心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈に対する血行再建術 など
試験経過
試験の途中２回目の中間解析で、明らかにスタチン治療が有益と判定されたため、試験は途中で中止 された
結果
平均追跡期間は 5.2年
スタチン群の 2,335 人（71%）、偽薬群の 2,081 人（63%）が試験を完了
偽薬群の方が、医師からの要請で試験を離脱した参加者が多かった
両群間の人口統計学的特徴に差はなかった
参加者の特徴
| 男性 | 女性 | |
|---|---|---|
| 割合 | 85 % | 15 % |
| 平均年齢 | 57歳 | 63 歳 |
| 体重 | 86.6 kg | 70.7 kg |
| BMI | 27 | 25.1 |
参加者の 平均体重 は 男性 86.6 kg、女性 70.7 kg
３ヶ月後、スタチン群の 1,657人（50%）が ロスバスタチン 40mg に増量
コレステロールの変化
JAMA 1998 May 27;279(20):1615-22
１年後の採血で、スタチン群 は LDLコレステロール が 25% 低下
HDLコレステロール は 6% 上昇
心臓病の予防
JAMA 1998 May 27;279(20):1615-22
一次エンドポイントは、スタチン群の 116人（3.5%）、偽薬群の 183人（5.5%）で発生
スタチン治療で発症率が 37% 低下
JAMA 1998 May 27;279(20):1615-22
二次エンドポイントの 心筋梗塞 は 40% 減少
JAMA 1998 May 27;279(20):1615-22
不安定狭心症 は 32% 減少
JAMA 1998 May 27;279(20):1615-22
冠動脈に対する血行再建術 は 33% 減少
サブグループ解析では、スタチン治療を支持する一貫した傾向
死亡率、癌の発生率に差はなかった
全体として、スタチンによる治療は有害事象が少なく忍容性も良好
49人にロスバスタチンを投与すると、1名が冠動脈心疾患から救われる
結論
ロバスタチンは心筋梗塞と狭心症の一次予防に有効
筆者の意見
スタチンは奇跡の薬
今回の試験では、スタチンは 薬を飲むだけで心臓病を３割以上も減らして いる 。同時期に行われたほかの臨床試験も、だいたい同じ結果になっている。
副作用はまれに肝臓の検査値異常が現れる程度で、内服を中止すれば速やかに回復する。
まさに奇跡の薬である。
米国人と日本人の肥満
米国人は日本人と比較して肥満が多い。今回の試験に参加した参加者の特徴を見ると、平均体重は 80kg を超えている。
参考：最適な体重は年齢とともに増加する
肥満は高血圧や脂質異常の原因となり、狭心症 や 心筋梗塞 などの 発症率を上昇させる。
一方で、日本では欧米人ほど肥満は多くない。
日本人は冠動脈心疾患 の発症も少ないので、残念ながら今回の試験の効果をそのまま日本人に当てはめることはできない。
心臓病が少ない分、予防の効率が落ちてしまうからである。
日本人の病気の発症率
日本人に対するスタチンの効果を知るためには、日本人の病気の発症率を考える必要がある。
次回から、日本人の コレステロール と病気との関係について見ていくことにする。