【通風】 尿酸 の 目標値 は 6~7 ぐらい?
通風は、尿酸の結晶が関節に溜まって起こります。尿酸の結晶は針のように鋭いので、動くと非常に強く痛みます。通風は治療をやめると4割が再発します。いつまで薬を飲み続ける必要があるのか検証した論文を紹介します。

ポイント
- 痛風は治療をやめると 38.9% 再発
- 再発率は 4年 29.4%
- 尿酸値が 7未満 で 痛風 の 再発 を防げる可能性がある
はじめに
尿酸はいくつまで下げればよいの?
書き手は、 6 ~ 7 ぐらいで良いのではないかと思っている。
通風は痛い
通風は、尿酸の結晶が関節に溜まって起こる。
尿酸値は高くても短期間なら問題ないが、長期間続くと関節の中に尿酸の結晶が溜まっていく。尿酸の結晶は針のように鋭いので、動くと関節の軟骨に刺さりに非常に痛い。
尿酸値が低ければ結晶は溶けるので、通風の治療は尿酸値を下げることになる。
尿酸の結晶は完全に溶けきるには時間がかかるので、長いあいだ尿酸値を低く維持する必要がある。
このことを、一度使った皿が汚れが落ちるまで時間がかかることに例えて、今回の論文の著者は 汚れた皿仮説 と呼んでいる。
今日は、通風の再発予防についての論文を紹介する。
痛風の高尿酸血症に対する2段階のアプローチ:「汚れた皿」仮説
A two-stage approach to the treatment of hyperuricemia in gout: The “dirty dish” hypothesis
Fernando Perez-Ruiz, Ana Maria Herrero-Beites, Loreto Carmona
Arthritis Rheum. 2011 Dec;63(12):4002-6.

A two‐stage approach to the treatment of hyperuricemia in gout: The “dirty dish” hypothesis
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尿酸低下治療 を中止して通風の再発を見た試験
目的
痛風患者に、生涯に渡る尿酸降下治療が必要か検討する
対象
痛風発症後に尿酸降下治療を受けている患者 211名
方法
- 痛風発症後5年間は、血清尿酸値を 6 未満に保つ尿酸降下治療を受けた
- 通風の発症から5年後、または痛風結節が消失してから5年後に尿酸低下治療を中止
- 尿酸値に応じて次の4群に分け、通風の再発を観察
- 6~6.99
- 7~8.20
- 8.21~9.32
- 9.33~12.40
結果
参加者の背景
数値 | |
---|---|
全参加者 | 211 名 |
男性 | 95.7 % |
痛風結節 | 24.6 % |
年数 | |
---|---|
痛風発症からの期間 | 6.7 年 |
尿酸低下療法の期間 | 5 年 |
尿酸値 | |
---|---|
痛風発作時の尿酸値 | 8.5 |
尿酸低下治療中の尿酸値 | 4.9 |
82人(38.9%)が痛風結晶の証明を伴う再発
そのうち 37人(45.1%)が、足の親趾の付け根の関節に再発
尿酸値と通風の再発率

尿酸値 | 再発率 |
---|---|
6~6.99 | .0 % |
7~8.20 | 21.3 % |
8.21~9.32 | 50.8 % |
9.33~12.40 | 61.3 % |
全体 | 38.9 % |
尿酸値 6~6.99 では再発は無かった
7~8.20 では 21.3%
8.21~9.32 では 50.8%
9.33以上 では 61.3% が再発
通風の再発までの期間

通風の累積再発率 | 1 年 | 2 年 | 3 年 | 4 年 |
---|---|---|---|---|
再発率 | 6.6 % | 11.4 % | 20.4 % | 29.4 % |
再発までの 推定平均期間 は 47ヶ月
累積再発率は 1年で 6.6%、2年で 11.4%、3年で 20.4%、4年で 29.4%

尿酸値 | 7~8.20 | 8.21~9.32 | 9.33~12.40 |
---|---|---|---|
再発までの期間(中央値) | 124 ヶ月 | 46 ヶ月 | 25 ヶ月 |
尿酸値が高い方が再発までの期間が短い
血清尿酸値 7未満 の達成に影響した因子
- 体重の減少(平均 -3.33kg)
- ロサルタンでの治療
- フェノフィブラートでの治療
- 利尿薬の使用(達成を阻害)
結論
尿酸結晶を完全に溶かす治療を行った後、血清尿酸値 7未満 に維持すると痛風の再発を防げる可能性がある
筆者の意見
痛風は治療をやめると 約 40% が再発する。1年で 6.5%、4年 で 30% 再発 というのは、患者さんへの説明で分かりやすいと思った。
論文中にあったロサルタンは血圧の薬だが、血圧を下げる効果が弱いのでやや使いにくい。
またフィブラートは高脂血症の薬だが、副作用がわりと多いので今では使わることは少ない。
尿酸の目標値は、最初は 6、落ち着いたら 7 で良さそうである。書き手は少し甘いので、初療でも 6.5 ぐらいまで下がれば良しとしている。
次回は尿酸低下薬の安全性を取り上げることにする。