【通風】フェブリク には安全性の懸念が指摘されている 丨 CARES試験
フェブキソスタットは、尿酸を下げる薬です。従来の薬より副作用が少ない薬として、2011年に認可されました。しかし、発売後に安全性を確認する試験が行われたところ、驚きの結果になりました。今日はその論文を紹介します。

ポイント
- フェブキソスタット の 安全性 を 従来薬 と比較
- 心血管死 が フェブキソスタット群 で多かった
- 総死亡も フェブキソスタット群 で多かった
はじめに
新薬は安全だろうか?
フェブリクは尿酸を下げる薬で。通風の治療で使われる。
国内で主に使用される尿酸降下薬には、アロプリノール(先発品:ザイロリック)、フェブキソスタット(フェブリク)、トピロキスタット(トピロリック)の3つがある。
アロプリノールは古い薬で、腎機能が悪いと効果が遷延して副作用が出やすいという欠点があった。
フェブキソスタットは 2011 年 に発売された薬で、排泄経路が腎臓と肝臓で約半々という特徴がある。尿酸が高い人は腎機能が悪いことが多いため、より安全な薬とされた。

フェブキソスタットは、米国で行われた臨床試験で心血管イベント(心筋梗塞 や 脳卒中 など)の副作用が多い傾向があった。FDA(アメリカ食品医薬品局)は発売後に安全性を評価する試験を行うことを指示した。
今日はその結果についての論文を紹介する。
痛風患者における フェブキソスタット の 心血管安全性 を アロプリノール と比較 丨 CARES試験
Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout
William B. White, M.D.et al. CARES Investigators
N Engl J Med 2018; 378:1200-1210

Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout | NEJM
Cardiovascular risk is increased in patients with gout. We compared cardiovascular outcomes associated with febuxostat, a nonpurine xanthine oxidase inhibitor, with those associated with allopurino...
北米で行われた フェブキソスタット の 安全性評価試験
目的
フェブキソスタット が アロプリノール より心血管イベントが多いか調べる
対象
心血管病歴のある 6,190 名 の痛風患者
心血管病の定義
- 心筋梗塞
- 不安定狭心症による入院
- 冠動脈その他の血行再建術
- 脳卒中
- 一過性脳虚血発作での入院
- 血管合併症のある糖尿病
方法
- ランダムにアロプリノール群とフェブキソスタット群に割り付け
- すべての患者は血清尿酸値 6.0未満 を目標にコントロール
一次エンドポイント
下記の合計
- 心血管死
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 不安定狭心症に対する血行再建術
二次エンドポイント
一次エンドポイント の 各項目
追加の安全性エンドポイント
総死亡、その他
試験経過
本試験は、2016年4月の 75% 中間解析時点で、一次エンドポイントが試験継続の基準に達していなかったが、総死亡の解析に矛盾が生じたため試験の継続が勧告 された
結果
参加者の背景
フェブキソスタット群 | アロプリノール群 | |
---|---|---|
年齢 | 64.0 歳 | 65.0 歳 |
男性 | 84.1 % | 83.8 % |
白人 | 69.7 % | 69.2 % |
通風の病歴 | 11.8 年 | 11.9 年 |
体重 | 97.7 kg | 97.3 kg |
両群の患者背景に差はなかった
56.6%の参加者が途中で治療薬を中止
45%の参加者が途中で離脱
離脱者は両群でほぼ同数で背景に差はなかった
エンドポイント

N Engl J Med 2018; 378:1200-1210
心血管イベントの発症総数は両群間で有意差はなかった

N Engl J Med 2018; 378:1200-1210
二次エンドポイントのうち、心血管死がフェブキソスタット群で多かった

N Engl J Med 2018; 378:1200-1210
総死亡もフェブキソスタット群で多かった
心血管死の原因
フェブキソスタット群 | アロプリノール群 | |
---|---|---|
心血管死全体 | 4.3 % | 3.2 % |
心臓突然死 | 2.7 % | 1.8 % |
心不全 | 0.6 % | 0.4 % |
脳卒中 | 0.3 % | 0.4 % |
心筋梗塞 | 0.4 % | 0.2 % |
心血管死の主な原因は心臓突然死 で、フェブキソスタット群の 2.7%、アロプリノール群の 1.8% で発生していた
結論
心血管疾患の高リスクの痛風患者において、心血管イベントの発症総数はフェブキソスタットはアロプリノールと同等
一方で、心血管死と総死亡はフェブキソスタット群で多かった
筆者の意見
フェブキソスタットの安全性評価試験
新薬のフェブキソスタットの安全性を、従来薬のアロプリノールと比較した試験である。このとき、フェブキソスタットは既に米国で発売から 9 年 が経過していた。
試験結果は、新薬の方が総死亡が多い という驚く結果になった。
45%の患者が試験で離脱
今回の試験では離脱者が多いことを問題にして、その信頼性を疑問視する意見もある。
しかし、論文には離脱者は両群でほぼ同数で、背景に特に違いはない。
臨床試験では、離脱者がいると差が検出できなくなるので、一般的にフェブキソスタットにとって有利な結果になるはずである。
また、離脱者に対しては調査会社を通じて可能な限り情報を収集している。その結果を加味しても、結論は変わらなかったと記載されている
実際のところ試験の主目的の心血管イベント総数では有意差が出ていないが、総死亡というずっと重いエンドポイントで有意差がついている。
治療必要人数(NNT)は 71名
本試験の結果に基づくと、約71例 を フェブキソスタット から アロプリノール に切り替えると、死亡が 1 例 減ることになる。これは無視できない数字である。
次回はこの結果に対してもう少し検討し、書き手の考えをまとめることにする。