【ビタミン】 酸化ストレス と ビタミンE 、アンチエイジング

ビタミンは体内で合成できない必須の栄養素です。酸化ストレスは老化や動脈硬化を引き起こしますが、ビタミンE はこれを抑制する作用があります。今日は ビタミンE の働きについて紹介します。

ポイント

  • ビタミン は体内で合成できない
  • 酸化ストレスは老化や動脈硬化を引き起こす
  • ビタミンE は体内で最も重要な抗酸化物質

はじめに

ビタミンE はどのようにはたらくのだろうか?

ビタミンE には、抗酸化作用・細胞膜の安定化作用・抗炎症作用がある。

酸化ストレスは、人間が酸素を使って生きている以上は避けられない障害になるが、動脈硬化や老化の原因になるとして注目されている。

ビタミンE は動脈硬化を抑制し、アンチエイジングに効果があると言われる。

今日はビタミンE について、日本人著者の総説を紹介する。

ビタミンE:酸化還元反応を制御する

Vitamin E: Regulatory Redox Interactions

Taiki Miyazawa, Gregor C. Burdeos, Mayuko Itaya, Kiyotaka Nakagawa

IUBMB Life. 2019 Apr;71(4):430-441.

https://iubmb.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/iub.2008
Vitamin E: Regulatory Redox Interactions

Vitamin E: Regulatory Redox Interactions

Vitamin E is an essential nutrient that was discovered in the 1920s. Many of the physiological functions of vitamin E, including its antioxidative effects, have been studied for nearly 100 years. Cha...

ビタミンE は 8種類 の物質の総称

ビタミンE は 1920年代 に発見された。ビタミンEは4種類(α・β・Γ・δ)のトコフェノールと4種類のトコトリオールの総称である。ビタミンEは体内では合成できないので、食事から摂取する必要がある。

ビタミンE総説の論文の図、ビタミンEは8種類の化合物の総称でそれぞれの構造式を示す.png (1600×799)
出典:
Vitamin E: Regulatory Redox Interactions

ビタミンEは脂溶性ビタミンのため、胆汁酸のミセルを介して小腸から吸収される。

ビタミンE総説の論文の図、ビタミンEの一種のα-トコフェノールの体内での動態を表した図.png (1600×788)
出典:
Vitamin E: Regulatory Redox Interactions

生体内で一番広く使われている ビタミンE は α-トコフェノール で、食事から吸収されたあと一度肝臓に蓄えられて、コレステロールなどの脂質を介して血中に放出される。

酸化ストレス と ビタミンE

生体は様々な酸化ストレスにさらされている

要因
内的要因 加齢、がん、免疫反応、炎症、過度な運動、虚血、
精神的なストレス、など
外的要因 喫煙、重金属、一酸化炭素、オゾン、スモッグ、排気ガス、
薬物、アルコール、油脂、放射線、など
論文の表をもとに作成

酸化ストレスは DNA障害 をはじめとした細胞障害を引き起こし、動脈硬化・がん・糖尿病・高血圧・メタボリックシンドローム・神経障害などの原因になると考えられてる。

ビタミンE は最も重要な抗酸化物質

生体には様々な酸化を防ぐ物質があるが、ビタミンEは広く全身の細胞膜に存在するので、最も重要な抗酸化物質と考えられている。

ビタミンE は酸化物質と接触して自身が酸化されることにより、抗酸化作用を示す。ビタミンE 自身は、ビタミンC などの他の抗酸化物質の働きにより再生する。

血中の脂質である LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の酸化が、動脈硬化と塞栓症を引き起こすことは広く知られている。ビタミンE は脂溶性の主要な抗酸化物質であり、これを抑制すると考えられている。

ビタミンE総説の論文の図、ビタミンEが抗酸化作用を示す機序を表した図.PNG (352×307)
出典:
Vitamin E: Regulatory Redox Interactions

ビタミンE は細胞膜を安定化する

抗酸化以外の作用としては、ビタミンEは細胞膜の柔軟性を上げ、安定化させる作用がある。

ビタミンE総説の論文の図、ビタミンEが細胞膜の安定化する機序表した図.PNG (477×770)
出典:
Vitamin E: Regulatory Redox Interactions

ビタミンE は 炎症を抑制する

ビタミンE はアラギドン酸カスケードを阻害して、抗炎症作用も示す。

訳注:アラギドン酸カスケードは、プロスタグランジン や プロスタサイクリン などの生理活性物質を介した炎症を起こす経路で、血管の収縮や血小板の凝集などを引き起こす。ビタミンEはこれを抑制する作用がある。

ビタミンE にはそのほかにも様々な働きがある

ビタミンE にはほかにも様々な働きがある

Γ-トコトリオールが多発性骨髄腫や頭頸部の扁平上皮癌の NFκB 経路を抑制することも報告されている。

α-トコフェノールが内皮細胞の障害を介した血管の劣化を抑制し、δ-トコフェノールが血管新生を抑制することも報告されている。

NASH(非アルコール性肝硬変)の運動失調の改善に、経口的なビタミンEの補充がに有用であったという臨床報告もある。

酸化還元のバランス

酸化ストレスは有害である一方、生体にとって必要である可能性もある

そのため、生体内での酸化還元のバランスが大切と考えられている。

筆者の意見

ビタミンE の抗酸化作用は、アンチエイジングに効果があると言われている。

ビタミンE はアーモンドをはじめとした豆類に多く含まれるほか、ほうれん草やブロッコリーといった緑色野菜にも含まれる。

詳しく知りたい方は、厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 などのページで解説されている。

次回から尿酸について

ビタミンE については今回で終了し、次回は尿酸と痛風について取り上げることにする。

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