【心不全】 カルベジロールには、心臓を保護する働きがある

心臓の病気で入院すると、血圧は高くないにも関わらず血圧の薬を処方されることがあります。これは β遮断薬 という薬で、心臓を保護するはたらきがあります。今日は β遮断薬 の心臓保護効果についての論文を紹介します。

ポイント

  • カルベジロール は 心不全の悪化を予防
  • 死亡のリスク を 65 % 軽減
  • 心不全 による 入院 を 38 % 予防

はじめに

心臓の病気で入院すると、血圧は高くないにも関わらず血圧の薬を処方されることがある。

これはどうして?

答えは心臓を保護する作用もある薬だから。

これは β遮断薬 という薬で、薬の説明書をには、①血圧を下げる薬 ②心臓を保護する薬 と書いてあるはず。

1990年代 の 論文になるが、カルベジロールという薬に心臓の保護作用があったという論文を紹介する。

慢性心不全の病態と死亡率に対するカルベジロールの効果

The Effect of Carvedilol on Morbidity and Mortality in Patients with Chronic Heart Failure

Milton Packer, M.D. et al. for the U.S. Carvedilol Heart Failure Study Group

N Engl J Med 1996; 334:1349-1355

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejm199605233342101
The Effect of Carvedilol on Morbidity and Mortality in Patients with Chronic Heart Failure | NEJM

The Effect of Carvedilol on Morbidity and Mortality in Patients with Chronic Heart Failure | NEJM

Controlled clinical trials have shown that beta-blockers can produce hemodynamic and symptomatic improvement in chronic heart failure, but the effect of these drugs on survival has not been determi...

カルベジロールの心臓保護効果を確かめた試験

対象

軽度の運動でも症状が出る(NYHA分類Ⅱ度以上)慢性心不全患者 1,084人

方法

  • 全ての患者にカルベジロール 6.25mg を 1日2回 2週間投与
  • 忍容性がなければ、一旦半量に減量して後日再増量
  • 696人 の カルベジロール群 と 398人 の 偽薬群 とランダムに割り付け
  • カルベジロール群はさらに4群の用量に割り振り(最大 100mg/day) 2~10週間 かけて増量

試験経過

研究は 1993年4月 に始まり 1995年2月 に中止された。

これは途中で 明らかにカルベジロール群が生存率が良いと分かった からである

結果

参加者の背景

偽薬群 カルベジロール群
年齢 58.1 歳 57.9 歳
男性 78.4 % 76.7 %
左室収縮率 22 % 23 %
論文の表 をもとに作成

偽薬群とカルベジロール群の患者背景に明らかな差はなかった

死亡のリスク

カルベジロール論文図1、死亡率の比較.png (359×282)
出典:
N Engl J Med 1996; 334:1349-1355

研究の期間中に偽薬群で7.8%が死亡、カルベジロール群で3.2%が死亡
カルベジロールは死亡のリスクを65%軽減

偽薬群 カルベジロール群
心不全の進行による死亡 3.3 % 0.7 %
心臓突然死 3.8 % 1.7 %
心筋梗塞 0.5 % 0.1 %
論文の表 をもとに作成

カルベジロールは、心不全の進行による死亡と突然死を大きく減少させた

入院のリスク

カルベジロー論文、図2入院せずに過ごせた割合の比較.png (360×283)
出典:
N Engl J Med 1996; 334:1349-1355

偽薬群の 24.6% が 心疾患による死亡 または 心不全の悪化で入院
カルベジロール群は 15.8%
カルベジロール は リスク を 38% 軽減

有害事象

偽薬群 カルベジロール群
めまい 20 % 33 %
疲労感 23 % 25 %
呼吸困難 25 % 22 %
上気道感染 19 % 19 %
心不全 21 % 16 %
論文の表 をもとに作成

カルベジロール群でめまいの副作用が多かった

ほとんどは治療の開始時または用量の増量時に起こっていた

結論

カルベジロールは心不全患者の死亡と入院を減少させる

筆者の意見

カルベジロール の先発品は アーチスト という。以前は先発品のアーチストの処方数が多かったが、最近は後発品のカルベジロールの処方数が増えている。

カルベジロールとアーチストの検索数.png (652×451)
カルベジロール と アーチスト の検索数 丨 Google Trends

カルベジロール を飲み始めるときは、少量からはじめて、めまいや心不全の増悪に注意しながら、ゆっくり増量することになっている。

ビソプロロール(先発品:メインテート)という同じ系統の薬にも、同様の臓保護効果が示されている。

ビソプロロールとメインテートの検索数の推移.png (641×450)
ビソプロロール と メインテート の検索数 丨 Google Trends

血圧は変わらなくても心臓にはよく効いているので、今飲んでいる人は安心して飲み続けてほしい。

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