【睡眠薬】 デエビゴは、ふらつきと健忘少ない安全な薬

デエビゴは 2020年 に発売された新しい睡眠導入薬です。デエビゴは ふらつき と 健忘 の副作用が少なく、睡眠薬内服後の転倒の防止に良いとされています。今日はデエビゴの安全性を評価した論文を紹介します。

論文のポイント

  • デエビゴ は ふらつき と 健忘 が少ない
  • 高齢者 の 転倒防止 に 役立つ

はじめに

新しい睡眠薬はどこが良いのだろうか?

デエビゴ(一般名:レンボレキサント) は 2020年 に発売された、新しい睡眠導入剤になる。

デエビゴの検索数の推移.png (672×468)
デエビゴ の検索数の推移 丨 Google Trends

デエビゴは、新しいタイプの オレキシン受容体拮抗薬 という薬に分類される。

オレキシン受容体拮抗薬 は従来の睡眠導入剤と違って、脳の睡眠に関係する部分にのみ作用するため、ふらつきや健忘の副作用が少ないとされる。

今日はデエビゴの安全性について、健常ボランティアを対象に評価した論文を紹介する。

レンボレキサント の安全性を 偽薬・ゾルピデム と比較 - 健康な高齢者で 夜中 と 明け方 に 聴覚覚醒閾値・ふらつき・認知機能 を評価

Safety of lemborexant versus placebo and zolpidem: effects on auditory awakening threshold, postural stability, and cognitive performance in healthy older participants in the middle of the night and upon morning awakening

Patricia Murphy, PhD, Dinesh Kumar, PhD, Gary Zammit, PhD, Russell Rosenberg, PhD, Margaret Moline, PhD

J Clin Sleep Med. 2020 May 15; 16(5): 765–773.

https://jcsm.aasm.org/doi/full/10.5664/jcsm.8294
Safety of lemborexant versus placebo and zolpidem: effects on auditory awakening threshold, postural stability, and cognitive performance in healthy older participants in the middle of the night and upon morning awakening | Journal of Clinical Sleep Medicine

Safety of lemborexant versus placebo and zolpidem: effects on auditory awakening threshold, postural stability, and cognitive performance in healthy older participants in the middle of the night and upon morning awakening | Journal of Clinical Sleep Medicine

Study Objectives:Our aim was to evaluate the effect of lemborexant versus zolpidem tartrate extended release 6.25 mg (ZOL) or placebo (PBO) on postural stability, auditory awakening threshold (AAT), and cognitive performance (cognitive performance ...

デエビゴ の 安全性 を 確かめた試験

対象

55歳以上 の 健常 な 成人 56名

方法

  • 全員が順に、デエビゴ 5mg・デエビゴ 10mg・マイスリーER 6.25mg・偽薬 の4種類の薬剤を内服
  • 各薬剤は1日だけ内服
  • 睡眠ポリグラフィー と 認知機能検査 で評価
  • 被検者は内服4時間後に聴覚刺激で起こされ、60秒間 立位で肩幅に足を開いて閉眼し、ふらつきを測定

一次エンドポイント

  • 中途覚醒時のふらつきが、デエビゴ が マイスリー より少ない

二次エンドポイント

  • 中途覚醒させる際の聴覚覚醒閾値
  • 中途覚醒時の認知機能
  • 起床時のふらつき
  • 起床15分後の認知機能

探索的エンドポイント

  • 中途覚醒から再入眠するまでの時間

結果

参加者の特徴

数値
年齢 63.0 歳
65歳以上 44.4 %
女性 77.8 %
白人 61.9 %
論文の表 をもとに作成

睡眠薬内服後のふらつき

デエビゴ論文の図、中途覚醒時のふらつき.PNG (536×312)
出典:
J Clin Sleep Med. 2020 May 15; 16(5): 765–773.

中途覚醒時のふらつきは、デエビゴ は マイスリー より少なく、偽薬より多い

デエビゴ論文の図、翌朝覚醒時のふらつき.PNG (531×319)
出典:
J Clin Sleep Med. 2020 May 15; 16(5): 765–773.

翌朝覚醒時のふらつきは、デエビゴ は マイスリー より少なく、偽薬と同等

入眠4時間後の聴覚覚醒閾値は、全群で差がなかった

再入眠までの時間

デエビゴ論文の図、再入眠潜時.PNG (713×316)
出典:
J Clin Sleep Med. 2020 May 15; 16(5): 765–773.

中途覚醒から再入眠するまでの時間は マイスリー と同等で偽薬より短い

認知機能

デエビゴ論文の図、認知機能の比較.png (738×559)
出典:
J Clin Sleep Med. 2020 May 15; 16(5): 765–773.

認知機能の低下は デエビゴ 10mg は マイスリー とほぼ同等、デエビゴ 5mg は マイスリー より少なかった

結論

  • デエビゴ は マイスリー よりふらつきが少ない
  • 刺激による覚醒は偽薬と同程度

筆者の意見

対照薬の ゾルピデム(先発品:マイスリー)は、日本でも広く使われている非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤になる。

マイスリーとゾルピデムの検索数の推移.png (644×454)
マイスリーとゾルピデムの検索数の推移 丨 Google Trends

ER錠(徐放錠)は効きめを長くするように改良された剤型で、日本では発売されていないがアメリカで使われている。

睡眠薬内服後の転倒は、高齢者では骨折などののリスクが高い。ふらつきと認知機能の低下が少ないのは、転倒防止につながる良い結果になる。

問題点は、デエビゴは半減期が30時間超あるのに、今回の試験では蓄積による影響が評価されていない。今回の結果は、あくまで 内服初日の安全性の評価 にとどまる。

デエビゴの血中濃度のグラフ.png (936×666)

次回は、デエビゴの効果と 30日間 続けて内服した時の影響について見てみることにする。

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