【睡眠薬】デエビゴは、飲み続けても効きめが落ちない
デエビゴは従来役と比較して、ふらつきや認知機能低下の少ない安全性に優れた薬でした。その効果についても、従来薬より優れているという報告があります。今日はその論文を紹介します。

論文のポイント
- デエビゴ は マイスリー 効く
- デエビゴは、30日 飲み続けても効きめが落ちない
- マイスリーは飲み始めは効果があるが、30日後 には効果が落ちる
はじめに
新しい睡眠薬の効きめはどうだろうか?
デエビゴは、ふらつきや健忘が少ない安全性に優れた薬だった。ではその効果はどうだとうか?
デエビゴの効果を従来薬のマイスリーと比較した臨床試験がある。
今日はその内容を紹介する。
高齢の不眠症患者の治療における レンボレキサント と 偽薬 と ゾルピデム徐放錠 の比較 - 第3相ランダム化臨床試験
Comparison of Lemborexant With Placebo and Zolpidem Tartrate Extended Release for the Treatment of Older Adults With Insomnia Disorder
A Phase 3 Randomized Clinical Trial
David Mayleben, PhD et al.
JAMA Netw Open. 2019;2(12):e1918254.
Comparison of Lemborexant With Placebo and With Zolpidem in Older Adults With Insomnia Disorder
This randomized clinical trial examines the effectiveness of treatment with lemborexant therapy compared with placebo and with zolpidem tartrate extended release therapy in adults 55 years and older with insomnia disorder.
背景
デエビゴはマイスリーと比較して、55歳以上の不眠症を効果かあるか?
対象
55際以上の 早朝覚醒型の不眠症患者 1,006名
方法
- デエビゴ 5mg、デエビゴ 10mg、マイスリー 6.25mg、偽薬 の 4群に分けて効果を比較
- 30日間の内服し、投与前・投与開始時(day1,2)・投与終了時(day29,30)に睡眠ポリグラフィーを測定
- 患者は毎日睡眠日誌を記入
一次エンドポイント
- 機械で測定した客観的な入眠潜時(寝付くまでの時間)
主要な二次エンドポイント
- 睡眠効率(消灯から点灯までの時間のうち、実際の眠っているの割合)
- 中途覚醒時間
- 夜間後半の中途覚醒時間
追加の二次エンドポイント
- 患者の主観による入眠潜時
- 睡眠効率
- 中途覚醒時間
結果
参加者の背景
数値 | |
---|---|
年齢 | 63.9 歳 |
65歳以上 | 45.0 % |
女性 | 86.4 % |
白人 | 72.3 % |
日本人 | 0.2 % |
参加者の背景は各群で差はなかった
睡眠ポリグラフィーによる客観的評価

JAMA Netw Open. 2019;2(12):e1918254.
デエビゴ は開始時から入眠を促進、効果は30日間維持
マイスリー は開始時は入眠を促進したが、30日後は偽薬より入眠が遅い
睡眠効率も、マイスリー と 偽薬 より改善
中途覚醒も マイスリー と 偽薬より少ない
夜間後半の中途覚醒も マイスリー と 偽薬より少ない
睡眠日誌による主観的評価

JAMA Netw Open. 2019;2(12):e1918254.
デエビゴ は 開始日から入眠を促進、効果は30日間維持
マイスリー も 開始日は入眠を促進したが。デエビゴより効果は低い
マイスリー は 30日後は患者は早く入眠したと思っているが、実際は寝ていない
主観睡眠効率は デエビゴ と マイスリー は同等
(両方とも自分ではよく眠れたと思っている)
主観中途覚醒は デエビゴ・マイスリー ともに偽薬より減少
(両方とも途中で起きなかったと思っている)
有害事象
偽薬 | マイスリー | デエビゴ 5mg | デエビゴ 10mg | |
---|---|---|---|---|
有害事象 | 25.4 $ | 35.6 % | 27.8 % | 30.6 % |
頭痛 | 6.2 % | 5.3 % | 6.4 % | 4.9 % |
傾眠 | 1.9 % | 1.5 % | 4.1 % | 7.1 % |
尿路感染症 | 1.0 % | 0.8 % | 1.1 % | 3.4 % |
デエビゴで傾眠が多い傾向にあったが、有意差はなかった
投与終了2週間以内に離脱症状を示した患者はいなかった
結論
- デエビゴ は睡眠導入に マイスリー と偽薬より有効
- 効果は 2日以内 に現れ、1ヶ月後も維持
- 早朝覚醒型の不眠症に対して特に有効
筆者の意見
試験のデザイン
day1,2、および day29,30 を平均化してデータを取り、ばらつきを抑える方法をとっている。よくデザインされた臨床試験だと思った。
傾眠の副作用
デエビゴは長時間型で、早朝覚醒に対する睡眠薬だが、入眠困難にもしっかり効く。

一方で、半減期が30時間超と長いので、翌日以降に傾眠の副作用が出る可能性がある。今回の論文では、有意差は無いもののデエビゴで多い傾向になっている。
デエビゴの添付文書では、他の臨床試験のデータをもとに傾眠の頻度は 10.6 % となっている。
やはり、一定の頻度で翌日も眠気が残る と考えて良さそうである。
睡眠薬と記憶障害
マイスリー は 30日服用 すると、自分では眠れたと思っているのに実際は寝ていない、という意外な結果だった。
論文には、おそらく睡眠薬による記憶障害だろうと記載されていた。
確かに、入院患者にベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を処方すると、突然夜間徘徊したにも関わらず、翌朝全く覚えていないケースに遭遇することがある。
どの薬剤でも起こり得るが、何となくマイスリーに多い印象がある。転倒のリスクが高く危険な状態になる。
デエビゴと薬価
デエビゴは、書き手も実際に飲んでみて切れ味の鋭い薬だと感じている。人によっては翌日に持ち越すこともあるが、2.5mg錠 も発売されているので調節がしやすい。
新薬なので、薬価が問題になる。
デエビゴの薬価
薬価 | |
---|---|
2.5 mg | 53.7 円 |
5 mg | 85.2 円 |
10 mg | 127.5 円 |
ゾルピデム(マイスリーの後発品)の薬価
薬価 | |
---|---|
5 mg | 10.1 円 |
10 mg | 14.6 円 |
3割負担でも、飲み続けるとそれなりの値段になる。それでも、経済的に許容できる人には切り替えが勧められると思った。
ビタミン
次回は薬剤から少し離れて、筆者が気になっている ビタミンE について調べることにする。