【塩分】 弁当を買って食べると血圧が 2 上昇する!

塩分を摂ると血圧が上がると言われています。それは本当なのでしょうか?今日は減塩の利点を調べた日本の論文を紹介します。市販の弁当は要注意です。

ポイント

  • 通常の弁当 と 減塩弁当 を比較
  • 通常の弁当 を食べると 血圧は 2 上昇
  • 減塩弁当 では 上昇しなかった

はじめに

塩分を控えると、何が良いのだろうか?

減塩が血圧を下げること広く知られていて、高血圧がある人は一日の塩分の量を 6 g 以下にすることが勧められている。

塩分の主体はナトリウムになる。

最近は ナトリウム の 代わり に カリウム を使った減塩調味料も販売されていて、代表的なものに減塩味噌や減塩醤油などがある。

減塩食・減塩醤油・減塩味噌の検索数の推移のグラフ.png (672×468)
減塩食・減塩醤油・ 減塩味噌 の検索数 丨 Google Trends

グラフに示すように、減塩調味料はこの 10 年 でかなり普及している。

今日は、減塩調味料の効果を調べた日本の研究を紹介する。

日本人男性における減塩・高カリウム加工食品の有用性と血圧への影響: 二重盲検ランダム化比較試験

Feasibility of Low-Sodium, High-Potassium Processed Foods and Their Effect on Blood Pressure in Free-Living Japanese Men: A Randomized, Double-Blind Controlled Trial

Yoko Umeki, Hitomi Hayabuchi, Hisashi Adachi, Masanori Ohta.

Nutrients. 2021 Oct; 13(10): 3497.

https://www.mdpi.com/2072-6643/13/10/3497
Feasibility of Low-Sodium, High-Potassium Processed Foods and Their Effect on Blood Pressure in Free-Living Japanese Men: A Randomized, Double-Blind Controlled Trial

Feasibility of Low-Sodium, High-Potassium Processed Foods and Their Effect on Blood Pressure in Free-Living Japanese Men: A Randomized, Double-Blind Controlled Trial

We aimed to verify the effect of new low-sodium high-potassium seasonings and processed foods containing poly-γ-glutamic acid on blood pressure in free-living settings. To this end, we conducted a randomized, double-blind controlled trial on 187 Japanese men, aged 35–67 years, who did not use antihypertensives. Participants were randomly allocated to an intervention (n = 93) or a control group (n = 94). They were given a boxed lunch and miso soup (average Na and K content for the intervention group: 1175 and 1476 mg; for the control group: 2243 and 703 mg, respectively). Blood pressure was measured three times every morning for 1 week immediately before and during the final week of the trial. On the day before and the final day of the intervention period, 24 h urine samples were collected. After intervention, the intervention group showed a significantly stronger decrease in the urinary sodium-to-potassium ratio than the control group (p < 0.001). The mean difference in systolic blood pressure change after adjustment for baseline values between the two groups was −2.1 (95% CI: −3.6, −0.6) mmHg. Compliance between the groups was similar, suggesting successful blinding. In conclusion, the use of new seasonings and processed foods aimed at lowering blood pressure in free-living settings may be feasible and effective.

目的

日本人男性の 低ナトリウム・高カリウム食 が血圧に及ぼす影響を評価する

対象

福岡県大牟田市の市役所と民間企業に勤務する 男性 194 人

血圧が 135 / 85 以上 または 血圧の薬を飲んでいる人 は除外

方法

ランダム に 減塩食群 と 通常食群 に割り付け

週5回 昼食 に 減塩弁当 もしくは 普通の弁当 を支給

弁当は同じ見た目で、参加者にどちらか分からないように配られた

塩分 減塩食 通常食
弁当 2.0 g 4.2 g
味噌汁 1.0 g 1.5 g
カリウム 減塩食 通常食
弁当 1156 mg 635 mg
味噌汁 320 mg 68 mg
論文の表 をもとに作成

減塩弁当は 減塩味噌汁と合わせて 塩分 が 2.7 g 少なく、カリウム が 780 mg 多い

研究開始時と終了時に 24時間蓄尿 で塩分とカリウムの排泄量を評価

結果

試験期間は 2010年6月 ~ 2010年8月初旬 の 6週間

評価対象者は 96.3 %
1人が入院で離脱、6人 が 利尿薬 などを飲んでいたため除外

参加者の特徴

減塩食群 通常食群
年齢 48.1 歳 48.0 歳
BMI 24.3 24.7
血圧 128.7 / 83.5 127.3 / 82.7
塩分排泄量 12.1 g 12.8 g
カリウム排泄量 1,787 mg 1,898 mg
論文の表 をもとに作成

支給された弁当を実際に食べた人の割合

減塩食の比較の論文、減塩食を食べた人の割合のグラフ.png (800×1120)
減塩食群 通常食群
減塩弁当 92.2 % 91.0 %
味噌汁 73.1 % 68.4 %
論文の記述 をもとに作成

支給された食事を食べた人の割合は、減塩食群と通常食群で同程度
減塩食がまずいと思って食べなかった人はいなかった

試験中の 血圧 と 塩分・カリウム排泄量の変化

減塩弁当の論文、血圧の変化のグラフ.png (800×1120) 減塩弁当の論文、塩分排泄量のグラフ.png (800×1120) 減塩弁当の論文、カリウム排泄量のグラフ.png (800×1120)
減塩食群 通常食群
血圧 128.3 / 83.0 (- 0.5 / - 0.4) 129.0 / 83.2 (+ 1.7 / + 0.5)
塩分 11.4 g(- 0.7 g) 12.1 g(- 0.6 g)
カリウム 2,222 mg(+ 435 mg) 1,640 mg(-258 mg)
論文の表 をもとに作成

血圧は通常食群で 1.7 上昇 した

塩分排泄量はいずれの群でも減少

カリウム排泄量は減塩食群で増加、通常食群で減少した

結論

減塩弁当による 高カリウム摂取 は、 ナトリウム の 尿中排泄 を促進して血圧の上昇を抑制する

筆者の意見

客観性の高い試験

今回の試験は、二重盲検ランダム化比較試験 で行われている。

参加者も弁当を配る側も、それが減塩弁当なのか通常の弁当なのか知らされていない。

実際に弁当を食べた人の割合が同程度なので、減塩調味料は通常の調味料と比較して 味は劣っていない ことが分かる。

1日で摂取した塩分量は、 24時間蓄尿 を行い正確に測定している。

客観性が高く信頼できるデータといえる。

一般的に食事療法の試験は、栄養指導を受けた群と受けなかった群を比較して行うことが多い。

その方法だと、栄養指導を受けた人は自分がどちらの群か分かるし、その他の生活習慣に気をつけることが多いので、食生活以外の要因が血圧に影響してしまう。

今回の試験では試験で配られる昼食のみを対象にしていて、減塩弁当か否か参加者にも弁当を配る側にも伏せられているので、減塩食の効果だけを正確に評価できている。

弁当の塩分量

今回の試験では、通常の弁当を食べると血圧が上がり、減塩弁当ではそれが抑制された結果になっている。

通常の弁当の塩分量が 5 g と多い ので、このようなになったと思われる。

一般的に弁当は保存するため塩分が多く使われて、さらに印象に残る味にするため濃く味付けされることが多い。

高血圧の人は一日の塩分量は 6 g 未満が推奨されているけれども、今回の弁当は 5 g なので、一度外食をするとそれだけで達成が難しい ことが分かる。

塩分排泄量の変化

今回の試験では、24時間蓄尿 で摂取した塩分量を推定している。

24時間蓄尿 は 一日の塩分排泄量を全て測定するので、食事のアンケートよりもずっと塩分量を正確に推定できる。

しかし、今回の試験では試験終了時には両群とも塩分排泄量が減少し、差がない結果になってしまっている。

論文では、試験が 6 ~ 8月 に行われたので、発汗量が増えて尿中の塩分量が減少したのだろうと考察されていた。

試験が夏以外に行われていれば、もっと整ったデータが得られた可能性はある。

それでも、塩分排泄量が季節によって変動することも分かったので、それも貴重なデータだといえる。

カリウム

カリウムは、野菜や果物に多く含まれている。減塩調味料の多くは ナトリウム の 代わりに カリウム を使用している。

カリウムには独特の苦みがあり、減塩調味料はこれを抑えるために ポリ-γ(ガンマ)-グルタミン酸(PGA)という旨味の成分が添加して、味が落ちないように工夫されている。

カリウム は ナトリウム と対抗して動くので、カリウムを多く食べる塩分が排泄される。

さらに、カリウムには心臓の収縮を抑制して脈拍を抑え、心臓を休ませる作用もある。

一方で、腎臓の働きが低下した場合や透析を受けている人では、カリウム が体に貯まってしまう場合がある。

ただし、今はカリウムを吸着して体外に出す薬もあって、また透析の場合でも透析の方法を調節することでカリウムを下げることができることも多い。

カリウムを気にするあまり食べる量が減ってしまっては困るので、必要な場合は適度に採血で評価しながら、しっかり食べることが大切だと書き手は考えている。

次回も血圧と食事について検討する。

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