【抗肥満薬】 新薬「ウゴービ」 は 5ヶ月 で 11 kg 減量するが、やめるとリバウンドする 丨 STEP 4 試験

ウゴービという新しい抗肥満薬が発売されました。5ヶ月 で 11kg 減量する、とても効果の高い薬です。しかし、やめるとリバウンドしてしまいます。副作用も 85 % と多く、薬価も高額です。今日はこの新しい薬について紹介します。

ポイント

  • ウゴービ は 5ヶ月 で 11kg 減量
  • やめると 6kg リバウンド
  • 副作用は 84.3 %
  • 薬価は 1年 で 12.5万円

はじめに

抗肥満薬はどれだけ効くのだろうか?

肥満を取り上げるうえで、避けては通れない話題がある。

2024年 2月 新しい肥満の薬が発売された。ウゴービ(一般名:セマグルチド)という薬になる。

ウゴービの検索数.png (930×630)

糖尿病薬から抗肥満薬へ

ウゴービ は 週に1回、インスリンと同じようにお腹に注射する。

セマグルチド は、もともと オゼンピック という名前で糖尿病の薬として使われていた。血糖を下げるほかに、脳に作用して食欲を抑える作用もあった。

参考: 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 オゼンピック皮下注 2mg  2.4 臨床に関する概括評価

オゼンピック皮下注 2mg  2.4 臨床に関する概括評価

オゼンピック皮下注 2mg  2.4 臨床に関する概括評価

Page11  副次的薬理作用 体重減少作用.

そこで抗肥満薬として、同じ薬が別の名前で認可された。それが ウゴービ になる。

ウゴービ の効果は大きく、開始 5ヶ月で 11kg 減量する。さらに 10ヶ月続けると 6.1kg 減量する。

しかし、薬をやめると 6kg リバンドする。さらに副作用の発現率が 84% と非常に高い。

今日はその ウゴービ の臨床試験の論文を紹介する。

過体重または肥満の成人における、体重減少の維持に対するセマグルチドと偽薬の週1回の継続皮下投与の効果 丨 STEP 4 試験

Effect of Continued Weekly Subcutaneous Semaglutide vs Placebo on Weight Loss Maintenance in Adults With Overweight or Obesity
The STEP 4 Randomized Clinical Trial

Domenica Rubino MD, et al. for the STEP 4 Investigators

JAMA. 2021 Apr 13; 325(14): 1–12.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2777886
Effect of Weekly Semaglutide vs Placebo on Weight Loss Maintenance in Adults With Overweight or Obesity

Effect of Weekly Semaglutide vs Placebo on Weight Loss Maintenance in Adults With Overweight or Obesity

This randomized trial compares the effects of continuing weekly treatment with subcutaneous semaglutide vs switching to placebo on change in body weight over 48 weeks among adults with overweight or obesity who completed a 20-week run-in period with semaglutide.

疑問

セマグルチド 2.4 mg の継続治療は、糖尿病を持たない肥満の成人の体重減少の維持に貢献しますか?

対象

食事療法での減量を、一度は失敗したことのある 902人

  • BMI 30以上 または
  • BMI 27以上 かつ 下記のいずれかを有する人
    • 高血圧
    • 脂質異常症
    • 睡眠時無呼吸症候群
    • 心血管疾患

除外基準:糖尿病、精神疾患 など

方法

すべての対象者は食事療法と運動療法を併用

0 ~ 20週

  • 全参加者が セマグルチド 0.25mg で開始
  • 週1回の維持用量 2.4mg まで少しずつ増量

20 ~ 75週

  • ランダムにセマグルチド継続群と偽薬群に 2:1 で割り付け
  • 20 ~ 68週 投与し、その後 7週間 追跡調査

一次評価項目

20~68週 の体重の変化率

二次評価項目

20~68週 の 腹囲、収縮期血圧、SF-36 身体機能スコア

その他の評価項目

  • 体重(kg)
  • HbA1c(糖尿病の値)
  • 空腹時血糖
  • 拡張期血圧
  • 脂質 など

結果

研究期間は 2018年 6月 ~ 2020年 3月

741 人 (92.3%) が治療を完了

試験参加者の特徴

特徴
白人 87.3 %
アジア人 2.1 %
女性 79.0 %
平均年齢 46歳
数値
体重 107.2kg
BMI 38.4
腹囲 115.3 cm

体重の変化率

セマグルチドSTEP4治験の論文の図、体重の変化率.PNG (577×456)
偽薬群(上) と セマグルチド継続群(下) の 体重の変化率
出典:
JAMA. 2021 Apr 13; 325(14): 1–12.
0~20週 21~68週
セマグルチド群 -10.6 % -7.9 %
偽薬群 同上 +6.9 %
論文の表 をもとに作成

慣らし期間(0~20週間)で、平均体重は 10.6% 減少して 96.1kg になった

20週後にランダム化された参加者は803人、うち女性 634人(79%)
参加者の特徴は両群間で同等

セマグルチド継続群
  • 体重はさらに 7.9% 減少
  • BMI は 4.7 減少
  • 腹囲は 9.7cm 減少
偽薬群
  • 体重は 6.9% 増加

血圧 と 検査値 の 変化

セマグルチドSTEP4治験の論文の図、収縮期血圧の変化.PNG (467×430)
偽薬群 と セマグルチド継続群 の 収縮期血圧 の変化
出典:
JAMA. 2021 Apr 13; 325(14): 1–12.
  • 収縮期血圧は 3.9 減少、血圧の薬を減量できた被験者が多かった
  • HbA1c と 空腹時血糖 がさらに低下、脂質プロファイルも改善

有害事象

0 ~ 20週(全参加者 902人)

ウゴービの0~20週の副作用の頻度のグラフ.png (720×1008)
割合
有害事象 84.3 %
重篤な有害事象 2.3 %
薬剤の中止 5.3 %
割合
消化器症状 71.4 %
吐気 36.8 %
下痢 23.5 %
便秘 22.2 %
嘔吐 15.5 %
割合
精神障害 6.1 %
論文の表 をもとに作成

21~75週(セマグルチド群 535人、偽薬群 268人)

セマグルチド群 偽薬群
有害事象 81,3 % 75.0%
重篤な有害事象 7.7 % 5.6 %
薬剤の中止 2.4 % 2.2 %
セマグルチド群 偽薬群
下痢 14.4 % 7.1 %
吐気 14.0 % 4.9 %
便秘 11.6 % 6.3 %
嘔吐 10.3 % 3.0 %
セマグルチド群 偽薬群
精神障害 8.6 % 13.1 %
論文の表 をもとに作成

結論

20週間の慣らし期間を終えた後、セマグルチド治療を継続したほうが継続的な体重減少を得られた

筆者の意見

ウゴービ は オンオフ のはっきりした薬

ウゴービは開始5ヶ月で 11kg 減量する。しかし 84.3% で副作用を伴う

楽に痩せる薬ではなく、吐気や下痢に悩みながら痩せる薬になる。

副作用は薬の使い始めに多い。薬を少量から始めて少しずつ増量するのは、体を慣らしていく意味がある。継続するうちに副作用はだんだん落ち着いてくる。

薬を中断すると、1年で 6.1kg リバウンドする。今回の試験では終了時でも体重は増えているので、さらに 時間が経つと元の体重まで戻る と思われる。

継続治療でさらに減量するが…

今回の試験は ウゴービ を継続する治療の有効性を確認した試験で、1年の継続治療でさらに 7.1kg 減量している。

しかし、長期の使用は可能なのだろうか?

ウゴービの薬価

ウゴービの薬価は表の通りになる。

ウゴービの価格

用量 薬価 1ヶ月の価格 保険診療(3割負担)
0.25 mg 1,876 円 7,504 円 2,252 円
0.5 mg 3,201 円 12,804 円 3,942 円
1 mg 5,912 円 23,648 円 7,095 円
1.7 mg 7,903 円 31,612 円 9,684 円
2.4 mg 10.740 円 42,960 円 12,888円
KEGGデータベース をもとに作成

臨床試験の通りに使用すると次のようになる。

使い続けたときの費用

期間 自費診療 保険診療(3割)
最初の5ヶ月 118,528 円 35,562 円
1年 419,248 円 125,778 円
15ヶ月 548,128 円 164,442 円

保険診療でもかなりの負担額になる。実際はさらに再診料などで月に 1,000 円 以上かかる。

高額な医療費

使う人の経済的な背景によるが、多くの人にとって長期の使用は難しく、5ヶ月程度使って止めるのが現実的だと思われる。

書き手はあまり勧めたくないが、自費診療の場合はさらに高額になる。

ウゴービを選択する場合、実際は低い用量を使用せざる得ない場合が多いと思う。

次回は、この新しい薬を従来の薬と比較する。

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