【抗肥満薬】 多くの 抗肥満薬 が、副作用で販売中止になった

食欲は生きていくうえで、一番大切な欲求です。抗肥満薬はこれを抑えるので、様々な副作用が出現します。過去に多くの抗肥満薬が、副作用により販売中止になりました。抗肥満薬の開発とその歴史について紹介します。

ポイント

  • 多くの抗肥満薬が、販売中止になった
  • 精神神経系の副作用が多い
  • 輸入された健康食品に含まれ、健康被害が出ている

はじめに

抗肥満薬は安全だろうか?

前回は、2024年 に発売された ウゴービ という画期的な抗肥満薬を紹介した。

今回はこの新薬を従来の薬と比較してみる。

日本の抗肥満薬

現在、日本で抗肥満薬として認可されているのは、マジンドール(商品名:サノレックス)と、防風通聖散という漢方薬の2つがある。いずれも古い薬で、はっきりとした減量の効果は示すデータはない。

2024年 4月 に薬局で薬剤師の指導のもとに購入できる薬として、オルリスタット(商品名:アライ)が発売 された。

オルリスタット には脂肪便などの独特な副作用があるが、精神神経系への影響はなく抗肥満薬としては比較的安全な薬とされる。

海外の抗肥満薬

OECD6カ国の肥満と過体重の割合を示したグラフ.png (1148×728)
OECD Health at a Glance 2023
をもとに作成

参考:年をとったら痩せてはいけない!

以前の記事でも紹介したように、米国は日本と比べて肥満者の割合がずっと高い。米国では多くの抗肥満薬が認可されている。以下に一覧をあげる。

米国で認可されている抗肥満薬

名称 1年効果 働き 備考
オルリスタット - 2.6 kg 脂肪の吸収抑制 脂肪便が出る
フェンテルミン
/トピラメート ER
- 8.8 kg 代謝を上げる and
脳の食欲抑制
神経系の副作用が多い
ナルトレキソン
/ブプロピオン ER
- 5.0 kg 脳の食欲抑制 精神系の副作用が多い
リラグルチド - 5.3 kg 胃腸と脳に作用 ウゴービと同じ作用
セマグルチド
(ウゴービ
- 15.3 kg 胃腸と脳に作用 消化器系の副作用が多い
チルゼパチド
(ゼップパウンド)
- 14.9~
- 19.9 kg
胃腸と脳に作用 ウゴービと同じ作用
米国糖尿病協会の声明(2020)
抗肥満薬の効果を比較した論文(2016)
セマグルチド STEP1 臨床試験 の論文(2021)
チルゼパチド  SURMOUNT-1 臨床試験 の論文(2022) をもとに作成

抗肥満薬を比較した研究は数多くあって、論文によってそれぞれの薬の評価も違ってくる。上の表は代表的な文献を参考にして書き手が作ったものになる。それでも、下の2つの新薬の効果が群を抜いて高い

チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)は ウゴービ と同じ作用の薬で、2023年11月 に米国で認可された。近いうちに日本でも認可されると思われる。

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出典:zepbound と wegovy の 検索数 丨 Google Trends

薬価はウゴービと同じぐらいと予想されていて、やめると同じようにリバウンドする。

抗肥満薬の安全性

抗肥満薬は安全だろうか?

食欲は、生きていく上で最も大切な欲求になる。抗肥満薬はこれを抑えるので、深刻な副作用が起きることがある。

過去にいくつもの薬剤が副作用で販売中止になっている。

販売中止になった薬

マジンドール(商品名:サノレックス)

日本で現在も認可されている マジンドール は 1960年代に開発された古い薬で、覚醒剤の類似物質で依存性がある。その危険性から、米国と欧州では 2000年 前後に認可が取り下げられている。

フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン

フェンフルラミン は1970年代に開発された食欲抑制薬で、マジンドールと似た作用を持つ。心臓弁膜症と肺高血圧症の副作用が報告され、1997年に認可が取り下げられた。

一方で、低用量ではてんかん発作を予防する作用があり、日本では2022年に遺伝性の難治性てんかんに対する薬(商品名:フィンテプラ)として認可された。

シブトラミン(メリディア、リダクティル、Meridia、Reductil)

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Meridia と Reductil の検索数 丨 Google Trends

脳に作用するSNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という薬で、同効薬は抗うつ薬として使われている。

1997年に米国で承認されたが、致死的不整脈やセロトニン症候群などでの死亡例が相次いで報告され、2010年に販売元の米国アボット社が自主回収した。

リモナバン(アコンプリア、Acomplia)

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Acomplia の検索数 丨 Google Trends

2006年に欧州各国で承認された抗肥満薬になる。

発売後に心血管病の減少効果をみる臨床試験が行われたが、試験中に精神障害(32%)と自殺者の増加(4名)が認められ、2008年 に規制当局の指示で試験は中止された。

薬剤は販売元の サノフィ・アベンティス社 が自主回収した。

ロルカセリン(ベルビック、BELVIQ)

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BELVIQ の検索数 丨 Google Trends

2012年に米国で認可された抗肥満薬で、2017年 からは日本のエーザイ社が全てのライセンスを獲得していた。

しかし、発がん性の懸念から 2020年 に米国で認可が取り下げられ、薬剤も回収された。

精神神経系の副作用と健康被害

以上のように、過去に多くの抗肥満薬が副作用で販売中止になっている。

食欲を抑える薬は脳に作用するため、精神神経系の副作用が多い

これらの薬剤は海外から輸入されたダイエット食品から検出さることがあり、その健康被害が問題になっている。

次回は、これらの教訓をもとにウゴービの副作用について検討する。

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