【帯状疱疹】新しいワクチン「シングリックス」は、帯状疱疹を 90% 予防する 丨 ZOE-70試験
新しい帯状疱疹ワクチン「シングリックス」は 帯状疱疹 を 90% 予防します。一方で副反応は 75 % で起き、1割の人は 1~2日 仕事を休んだり家で動けなくなる場合があります。今日は「シングリックス」について紹介します。

ポイント
- シングリックスは 帯状疱疹 を 91.3% 予防
- 副反応は 75 %
- 副反応 は 2 ~ 3 日 続く
- 2回目の副反応も1回目と同等
Shingrix® と Zostavax®
新しいワクチンの効果はどうだろうか?
今日は日本で 2020年 に発売された、新しい帯状疱疹ワクチンについて紹介する。商品名は「シングリックス」という。
シングリックス の 英語表記 は、"Shingrix®" で、前回まで紹介した弱毒生ワクチンの、海外での商品名は "Zostavax®" になる。

シングリックスは、従来のワクチンを大きく超える有効性と効果期間を持っている。
今日は、その新しい帯状疱疹ワクチンの有効性を示した論文を紹介する。
70歳以上の成人に対する帯状疱疹サブユニットワクチンの効果
Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older
Anthony L. Cunningham, M.B. et al. ZOE-70 Study Group
N Engl J Med 2016; 375:1019-1032

Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older | NEJM
A trial involving adults 50 years of age or older (ZOE-50) showed that the herpes zoster subunit vaccine (HZ/su) containing recombinant varicella–zoster virus glycoprotein E and the AS01B adjuvant ...
シングリックス の 効果を確かめた 大規模試験
対象
- ヨーロッパ・北米・ラテンアメリカ・アジア(日本も含む)・オーストラリアの18か国
- 70歳以上の成人 13,900名
- 帯状疱疹の既往、水痘・帯状疱疹のワクチン接種歴のある人、免疫抑制状態の人を除外
- ランダムに選ばれた 1025人(7.4%) は接種部位の局所反応を7日間記録
方法
- ワクチン投与群と偽薬群にランダムに割り付け
- 薬剤は2ヶ月開けて2回筋肉注射
- 帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の発症から90日後に、3/10以上 の痛みがあった場合に診断
- 2回目の接種を受けなかった人は解析から除外
- 同時に行われた ZOE-50試験 の結果と合わせて解析
一次エンドポイント
- 帯状疱疹の発症
- 帯状疱疹後神経痛の発症
二次エンドポイント
- 帯状疱疹による疼痛
- 接種による副反応、有害事象 など
結果
研究は 2010年 8月 に登録開始、2015年 7月 に終了
追跡期間の平均は 4年
13,163人(94.7%)が解析対象に含まれた
ZOE-50試験 と合わせて、16,586人 が解析対象になった
両群の人口統計学的特徴に差はなかった
ZOE-50 および ZOE-70試験 の結果を合わせた解析

N Engl J Med 2016; 375:1019-1032
帯状疱疹は、ワクチン群 25名(0.4%)、偽薬群 284名(4.1%) 発症
ワクチンは帯状疱疹を 91.3% 予防
70代 と 80歳以上 でワクチンの有効性に差はなかった

N Engl J Med 2016; 375:1019-1032
帯状疱疹後神経痛は、ワクチン群 4名(0.1%)、偽薬群 46名(0.7%) 発症
50歳以上 の 帯状疱疹後神経痛 を 91.2% 予防

N Engl J Med 2016; 375:1019-1032
70歳以上 の 帯状疱疹後神経痛 を 88.8% 予防
有害事象
ZOE-70 13,900人、及び追加試験に選ばれた 1,025人 の検討
N Engl J Med 2016; 375:1019-1032
注射部位の副反応は、ワクチン群 74.1%、偽薬群 9.9%
痛み 68.7%、発赤 39.2%、腫脹 22.6%
グレード3(日常生活に影響を及ぼす重症)の反応は、ワクチン群 8.5%、偽薬群 0.2%
N Engl J Med 2016; 375:1019-1032
全身性の副反応は、ワクチン群 53.0%、偽薬群 25.1%
倦怠感 32.9%、筋肉痛 31.2%、頭痛 24.6%
グレード 3 の反応は、ワクチン群 6.0%、偽薬群 2.0%
副反応の持続期間 は 注射部位反応で 2 ~ 3 日、全身反応で 1 ~ 2 日
副反応の頻度と重症度は、2度目も1度目と同等
考察
- 弱毒生ワクチンは、年齢が上がるにつれ有効性が低下するが、新しいワクチンはすべての年齢層(50代~80代)で効果がある
- 35人にワクチンを接種すると帯状疱疹を1人予防できる
結論
帯状疱疹サブユニットワクチンは、70歳以上の成人における帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を予防する
筆者の意見
シングリックスは、接種後4年以内 の 帯状疱疹 の予防効果が 90%超 と極めて高い。
弱毒生ワクチンが 70歳以上 の高齢者に対する予防効果が低かったのと比べて、シングリックスは高齢者に対しても同等の効果がある。
一方で、副反応の発生率は 75% と高い。特に弱毒生ワクチンでは報告が少なかった全身性の副反応が 50%以上 の確率で起こる。
約1割 の人は、1~2日 仕事を休んだり家でも動けなかったりするようである。
次回は、シングリックスの安全性と効果の持続期間を検討する。