【帯状疱疹】 弱毒生ワクチン「ビケン」の効果は数年
「ビケン」は帯状疱疹の予防において効果的なワクチンです。欠点としては、数年で効果が落ちることが挙げられます。今日は「ビケン」の副反応と効果の持続期間を紹介します。

ポイント
- 弱毒生ワクチンの副反応は 50%
- 接種後 5年 の予防効果は 40%
- 接種後 10年 の予防効果は 20%
はじめに
帯状疱疹ワクチンの安全だろうか?
今回は「ビケン」安全性と効果期間を検討する。
弱毒生ワクチンの安全性
安い方の帯状疱疹ワクチンは弱毒生ワクチンといって、弱毒化した生きてるウィルスを注射するので、ワクチン接種による帯状疱疹の発症に注意する必要がある。
そのため、免疫抑制状態にある人は、弱毒生ワクチンは接種できない。
前回の論文では、
- ワクチン群より偽薬群で接種後1ヶ月以内の帯状疱疹の発症が多い
- ワクチンウイルスのDNAが検出されなかった
以上より、ワクチン接種による帯状疱疹の発症は明確に否定されている。
有害事象について
次に有害事象について検討する。
前回少し紹介したが、今回の臨床試験はワクチンの効果を確かめる本研究と、有害事象を詳しく調査する追加研究の2本立てで評価している。
本来であれば全員を詳細に調査するのが望ましいが、そうすると調査費用が高額になってしまう。そのためワクチンの治験では、接種した中の一部の人を抽出して、追加研究に割り当てるという方法が用いられる。
重篤な有害事象

N Engl J Med 2005; 352:2271-2284補足資料
今回の臨床試験の重篤な有害事象の定義は、次のようになっている。
- 死亡
- 生命に差し迫った危機
- 後遺障害
- 入院
- がん
- 薬剤の過剰投与
- 上記を防ぐため適切な医学判断に基づく内科的・外科的治療
重篤な有害事象については、困ったことに全体の研究と追加研究で異なる結果になっている。
- 全体の研究:重篤な有害事象は両群で差がない
- 追加研究:ワクチン群の方が重篤な有害事象が多い
両方の研究で定義が変更されていないことを考えると、偽薬群と差がなかったという全体の研究の結果を採用して良さそうである。
本研究では、接種後43日目に電話の自動音声で、被検者に有害事象が無かったか確認している。

N Engl J Med 2005; 352:2271-2284補足資料
全体の研究ではほとんど副反応を拾えていない。
これは接種から1ヶ月以上経ってから電話調査をしたため、正確に思い出せなかった人が多かったと推測される。
ワクチン接種時の副反応
有害事象を調べる追加研究では、多くの副反応が報告されている。

N Engl J Med 2005; 352:2271-2284補足資料
被検者は毎日体温の測定と、接種部位の腫脹・発赤・圧痛・その他の副反応を記録することが求められている。
接種部位の副反応はワクチン接種群で、
- 発赤(35.8%)
- 圧痛(34.5%)
- 腫脹(26.2%)
- そう痒(7.1%)
- 熱感(1.7%)
となっている。上段3つが特に多いのは、個別に記入欄があったからだと思われる。
まとめると、接種部位の副反応はワクチン接種群で多く、発生率は 35% 以上になる。
日本人の効果
帯状疱疹ワクチンについては、国立感染症研究所発行 の 帯状疱疹ワクチンファクトシート(2017) に詳しく載っている。以下いくつか内容を紹介する。
効果の持続期間
- 接種後 4~7年の帯状疱疹の予防効果は 39.6%
- 接種後 7~11年の予防効果は 21.1%
- 別の試験では、接種後1年以内の帯状疱疹発症予防効果は 68.7%、8年目で 4.2%
有害事象の発生率
- 国内臨床試験での有害事象発生率は 56.0%
- うち接種部位の副反応は 50.6%

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」審査報告書
まとめると、弱毒生ワクチンは 接種後数年で効果が落ちる、50% 強 で副反応が起きる ようである。
まとめ
弱毒生ワクチンは、帯状疱疹の発症と重症化の予防において、従来の抗ウィルス薬よりずっと効果がある。
一方で弱毒生ワクチンの欠点は、高齢者に対しては有効性が低く、効果が数年で切れる ことである。
新しく登場した帯状疱疹サブユニットワクチンは、この欠点を克服している。
次回は、新しい帯状疱疹ワクチンについて紹介する。