【帯状疱疹】弱毒生ワクチン「ビケン」は、帯状疱疹を 51.3% 予防する
帯状疱疹のワクチンは2種類あります。どちらも帯状疱疹の予防に効果がありますが、効果の強さと値段が違います。今日は 2016年 に承認された、安い方のワクチンについて紹介します。

ポイント
- 弱毒生ワクチンは、帯状疱疹を 51.3% 予防
- 発症しても痛みを 61.1% 軽減
- さらに 帯状疱疹後神経痛 の発症率を 66.5% 軽減
はじめに
帯状疱疹ワクチンはどれだけ効くのだろうか?
帯状疱疹ワクチンには2種類ある。2つあるのでどちらを打ったら良いか悩む方もいるではないかと思う。
シングリックス | ビケン | |
---|---|---|
3年効果 | 90% | 50% |
10年効果 | 70% | 20% |
副反応 | 75% | 50% |
注射部位 | 筋肉内 | 皮下 |
値段 | 2万円程度 × 2回 | 1万円程度 |
参考:2種類の帯状疱疹ワクチン、「シングリックス」「弱毒生ワクチン」の比較
安い方のワクチンの「ビケン」は、値段が手頃でそこそこの効果がある。「シングリックス」はかなり値段が高いが、より強い効果が期待できる。
今日は「ビケン」について紹介する。
水ぼうそう と 帯状疱疹

帯状疱疹と水痘(水ぼうそう)は同じウィルスによって起きる。日本では 2014年から水痘ワクチンが小児の定期接種となり、その発生数は大きく減少している。
このワクチンを、成人の帯状疱疹の予防に使うのが「ビケン」になる。
このワクチン自体のデータはないが、同じウィルス株から作られたワクチンの海外データがある。
今日はその論文を紹介する。
弱毒生ワクチンは、高齢者の帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を予防する
A Vaccine to Prevent Herpes Zoster and Postherpetic Neuralgia in Older Adults
M.N. Oxman, M.D. et al. for the Shingles Prevention Study Group
N Engl J Med 2005; 352:2271-2284

A Vaccine to Prevent Herpes Zoster and Postherpetic Neuralgia in Older Adults | NEJM
The incidence and severity of herpes zoster and postherpetic neuralgia increase with age in association with a progressive decline in cell-mediated immunity to varicella–zoster virus (VZV). We test...
背景
- 帯状疱疹の発症率と重症度は年齢とともに増加する
- 弱毒生ワクチンがそれらを軽減する効果があるか調査した
対象
- 水痘の既往があるか、米国に30年以上在住している60歳以上の 38,546人
- 免疫不全の人は除外(HIV・悪性腫瘍・免疫抑制剤の使用など)
- 帯状疱疹の既往・水痘ワクチンの接種歴がある人も除外
- 被検者のうち 6,616人を、有害事象を調べる追加研究に割り当て
方法
- ランダムにワクチン接種群と偽薬群に分け、薬剤を投与
- 帯状疱疹と診断された場合は無償で抗ウィルス薬で治療
一次エンドポイント
- 帯状疱疹による苦痛スコア(BOIスコア)
二次エンドポイント
帯状疱疹後神経痛の発症率
発症90日以降も 自己評価 3/10 以上の痛みが継続すると定義
三次エンドポイント
- 帯状疱疹の発症率と重症度
結果
平均追跡期間は 3.13年
追跡率は 95%以上(死亡 4.1% 、追跡不能 0.6%)
ワクチン接種群と偽薬群の参加者の背景に差はなかった
984人(2.6%) が帯状疱疹と診断
うち 93% で野生型のウィルスDNAを検出
ワクチン型のウィルスDNAは検出されなかった
帯状疱疹の予防
N Engl J Med 2005; 352:2271-2284
ワクチンは帯状疱疹の発症を 51.3% 予防
70歳以上で 37.6%、それ未満では 63.9%
帯状疱疹の苦痛スコア(BOIスコア)

ワクチン群 | 偽薬群 | 減少率 | |
---|---|---|---|
全体 | 2.21 | 5.68 | 61.1 % |
男性 | 2.09 | 5.81 | 64.0 % |
女性 | 2.34 | 5.47 | 57.3 % |
60~69歳 | 1.5 | 4.33 | 65.5 % |
70歳以上 | 3.47 | 7.78 | 55.4 % |
ワクチンは帯状疱疹を発症しても、痛みを 61.1% 抑制
性差や年齢による差はなかった
帯状疱疹後神経痛の予防
N Engl J Med 2005; 352:2271-2284
帯状疱疹後神経痛はワクチン群で 27例(0.1%)、偽薬群で 80例(0.4%)で発症
ワクチン は 帯状疱疹後神経痛の発症率を 66.5% 軽減
有害事象
重篤な有害事象は両群で同等
軽度の有害事象はワクチン群の方が多かった
多くは接種部位の局所反応だった
考察
ワクチン群より偽薬群で、接種後1ヶ月以内の帯状疱疹発症数が多く(ワクチン群 7例、偽薬群 24例)、ワクチンウイルスのDNAが検出されなかったことは、ワクチン接種による帯状疱疹の発症は無かった ことを示している
59人にワクチンを接種すると、1名の帯状疱疹が予防できる
筆者の意見
70歳以上の高齢者では、弱毒生ワクチンの予防効果はやや弱い。それでも、ワクチンは抗ウィルス薬よりずっと効果が高い。
抗ウィルス薬は帯状疱疹を発症してから使うので、当然ながら予防効果はない。
抗ウィルス薬の一つ バラシクロビル(先発品:バルトレックス)は、帯状疱疹の疼痛およびその持続期間を 2~3割 改善させる 作用がある。
しかし、書き手は バラシクロビル による 急性腎障害・精神障害 を 2例 経験しており、あまり使いやすい薬だとは思っていない。
2017 年 に アメナメビル(先発品:アメナリーフ)が発売されて、以前より高齢者や腎機能が低下した場合でも副作用が出にくくなっている。

しかし、ワクチンの効果はそれらをずっと凌駕する。
次回はこのワクチンの安全性と効果期間を検証する。