【帯状疱疹】新しい帯状疱疹ワクチン「シングリックス」の 効果 は 10年
シングリックス は 10年経っても7割の効果が維持されます。安全性についても詳しく評価されており、遺伝性疾患や免疫疾患の副作用も否定されています。今日は副反応と長期的な効果について紹介します。

ポイント
- シングリックスの有効性は 10年で 70 %
- 接種後4年間の調査で、遺伝疾患は否定
- 同じく免疫疾患の発症も否定
はじめに
シングリックス は 安全だろうか?
シングリックス の予防効果は、4年で 91.3% と極めて高かった。今回はその安全性と長期効果を検討する。
シングリックスは全く新しいタイプのワクチン
シングリックスは、以下の2つの成分を混合して作った、新しいタイプのワクチンになる。
- 遺伝子組換えで作ったウィルスの一部分(糖タンパクE)
- 免疫反応を増強させる添加剤(アジュバント)
- 添加剤の内容は、細菌由来の成分 と 植物から抽出した成分

シングリックス は 弱毒生ワクチン と違って、生きたウィルスを使わないので、免疫不全の人も接種することができる。
一方で新しいタイプのワクチンなので、安全性について慎重に評価されている。
論文で報告された有害事象
ZOE-70試験 における重篤な有害事象の定義
参照:試験のプロトコル
- 死亡
- 生命に関わる危機
- 入院
- 後遺障害
- 子孫に対する影響
- 癌
- アレルギー性の気管支痙攣
- 血液疾患
- 痙攣 など
子孫に対する影響
子孫に対する影響というのは、従来のワクチンにはなかった評価項目で、遺伝子組み換え技術を使用したので設けられたと考えられる。
ワクチン接種群 | 偽薬群 | 有意差 | |
---|---|---|---|
確定例 | 3例 | 1例 | なし |
疑い例 | 2例 | なし | なし |
論文中に 3例(0.04%)、疑い症例は 2例(0.03%) 報告があり、おそらくワクチンを接種した父親から生まれた子供に、先天性の奇形があった例だと思われる。
一方、偽薬群での報告は確定例が 1例(0.01%) で、発症例が少なく有意差はない。
自己免疫疾患、その他の免疫介在性疾患
遺伝子組み換え技術に加えて、免疫賦活のための添加剤を用いているので、有害事象で注意すべき免疫介在性疾患を挙げている。
参照:試験のプロトコル
内容は多岐に渡るが、全身性エリテマトーデス・1型糖尿病・自己免疫性貧血など、おおよそ考えられうる免疫疾患を網羅している。
ワクチン接種群 | 偽薬群 | 有意差 | |
---|---|---|---|
確定例 | 92例 | 97例 | なし |
いずれも、偽薬群と比較して有意差はない。
ワクチン接種後の心筋炎
最近話題になる、ワクチン接種後の心筋炎についての記載もあった。
ワクチン接種群 | 偽薬群 | 有意差 | |
---|---|---|---|
確定例 | 1例 | 2例 | なし |
疑い例 | 1例 | 1例 | なし |
確定1例、疑い1例で(0.05%)、偽薬群と変わらない。シングリックスは心筋炎の心配は無さそうである。
これらを含めて、有害事象について補足資料の約30ページに渡って検討しているが、いずれも偽薬群と有意差はない。
書き手は この安全評価の信頼性は高い と考える。
10年後 までの追跡結果
ワクチンの長期安全性
2022年に この研究を最大10年間追跡した結果(ZOE-LTFU試験の中間解析) が出たが、死亡やその他の重篤な有害事象はワクチンと因果関係のあるものはなかった記載されている。
新しい論文には、子孫に対する影響 や 免疫介在性疾患 の発症についての記載は無かった。
接種後4年以上経過してから有害事象が発生した場合、ワクチンとの因果関係を示すのは困難、というのが一般的な解釈だと思われる。
他にも論文も探してみたが、記載されているものは見つからなかった。
ワクチンの効果期間
同じ論文で、50歳以上で長期的なワクチンの有効性は、接種後8年で 83.3%、10年で 73.2% と報告されている。
ワクチン接種後 10年間 は効果が維持される と考えて良さそうである。
シングリックスについては、以上で終了とする。
次回は2種類の 帯状疱疹ワクチン を比較し、まとめにする。