【Google Trends】 簡単にグラフが作れる便利なサービス

Google Trends は Google の検索数の推移を、グラフで分かりやすく表示してくれる、誰でも無料で利用できるサービスです。今日は Google Trends の便利な点と、その欠点について紹介します。

ポイント

  • Google Trends の 紹介
  • 世界 と 日本 の比較
  • 中国 と Google Trends の 弱点

Google Trends とは?

Google Trends は Google での検索数の推移を、グラフで分かりやすく表示してくれる、誰でも無料で利用できるサービスになる。

Google Trends の使い方はとても簡単で、トップページに行き、検索したいキーワードを入力する。するとすぐにグラフが表示される。

GoogleTrendsのトップページ、世界で今一番検索されていること49ers.png (1600×782)
Google Trends トップページ

グラフは最も検索数の多かった時を 100 として、相対的な変化を表している。

新薬の発売と検索数

新しい薬が発売されると、検索数も増加する。

新しい睡眠導入剤の デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、日本で 2020年7月6日 に発売された。

デエビゴの検索数の推移.png (640×450)
デエビゴの検索数 丨 Google Trends

参考:デエビゴは、ふらつき少ない安全な薬

発売前の微妙な検索数は、製薬企業の社員や医療関係者が、新薬に興味を持って調べている。

発売後は、薬を処方された・もしくは処方を勧められた患者さんが、情報を求めて検索している。

患者さんの数は医療従事者よりもずっと多い。薬の認知度が上がるとともに、検索数も増えていく。

複数のキーワードの比較

2つ以上の検索ワードを比較することも可能で、検索興味の移り変わりを知ることができる。

試しに2種類の帯状疱疹ワクチン、Shingrix と Zostavax を比較してみる。

shingrixとzostavaxの検索数の推移.png (636×451)
ShingrixとZostavaxの検索数 丨 Google Trends

参考:2種類の帯状疱疹ワクチン、「シングリックス」「弱毒生ワクチン」についてのまとめ

新しい帯状疱疹ワクチンの Shingrix は、2017年にカナダと米国で最初に承認された。

Shinrix は発売以降大きく検索数が増えている。

一方で、古いワクチンの Zostavax の検索興味が、入れ替わるように少しずつ低下していることが分かる。

英語と日本語

英語と日本語の検索数

英語と日本語の検索ワードを比較することもできる。新しい帯状疱疹ワクチンの「シングリックス」と、その英語表記の "Shingrix" を比較してみる。

シングリックスとshingrixの検索数の推移.png (647×446)
シングリックス と Shingrix の 検索数 丨 Google Trends

すると、全世界の英語の検索数が、圧倒的に日本語を上回っている。

英語は世界で最も使用人口が多い言語で、15 億人 が使っている。2位は中国語で 11 億人、3位は ヒンディー語(インド)の 6 億人 の順になる。

日本語は 1.2 億人 で、13 番目 になっている。

論文の言語

出典:
リクルート進学総研 ホームページ

アカデミーの世界では、英語が圧倒的に世界標準語になっている。

日本で執筆される論文の実に 99% 以上は、英語で投稿されている。他のアジア諸国でも同様で、中国と韓国も 99% を超えている。

日本で執筆された論文を探すときも、日本語ではなく英語で探す必要がある。

睡眠導入剤に対する日本の興味

英語の使用人口は日本語よりはるかに多い。しかし最初に紹介した睡眠薬のデエビゴは特殊で、全世界での日本語の検索数が英語を上回っている。これはとても変わった現象になる。

デエビゴとDayvigoの検索数の推移.png (639×450)
デエビゴ と Dayvigo の検索数 丨 Google Trends

デエビゴを開発したのが、日本のエーザイ社であることが理由の一つにある。しかし、それだけでは説明ができない。

同効薬のベルソムラ(一般名:スボレキサント)は、2014年に発売されている。

ベルソムラとBelsomraの検索数の推移.png (645×449)
ベルソムラ と Belsomra の検索数 丨 Google Trends

ベルソムラを開発したのは米国の メルク社 で、米国で先に発売されている。しかし、それでも日本語の検索数は世界に匹敵したまま続いている。

新規の睡眠導入剤に対する興味が、日本は世界と比べてとても高いことがわかる。

国や地域別の検索興味

このサイトでは触れることは少ないが、国や地域ごとの興味を知ることもできる。「融雪剤」というキーワードは、毎年冬に検索数が増える。

融雪剤の検索数.png (655×451) 都道府県別の融雪剤の検索興味.png (238×213) 融雪剤の検索興味の高い県トップ5.png (701×387)
融雪剤の検索数の推移 丨 Google Trends

融雪剤の検索興味は、北海道・東北・日本海側で高い。

Google Trends の問題点

Google Trends は、このように手軽に使えるのが便利だが、問題点もある。

Google の シェア は 100% ではない

Google は世界の サーチエンジン で 90% 以上のシェアを誇っている。

世界のサーチエンジンシェアのグラフ.png (720×1008)
シェア 世界 日本 中国
Google 92 % 75 % 3 %
Yahoo! 1 % 14 % 0.1 %
Bing 3 % 9 % 15 %
96 % 98 % 18 %
Statcounter Global Stats をもとに作成

日本のシェアは 75% にとどまるが、2位の Yahoo! は Google のアルゴリズムを使用しているので、実質は 90%以上 になる。

しかし、中国など一部の国は Google の使用を禁止している。

中国のサーチエンジンシェア1位は百度(Baidu 62 %)で、Google は わずか 3 %しかなく、VPN など特殊な方法を使って使用している。

中国の人口は 14 億人 で、世界人口の 6分の1 を占めている。Google Trends では、この部分のデータが欠けることになる。

検索できるのが 2004年以降

Google Trends のサービス開始は 2006年 で、検索できるのは 2004年以降になる。2004年以前に発売された薬の動向などを調べるのには適さない。

ベンゾジアゼピンとbenzodiazepineの検索数の推移.png (652×449)
ベンゾジアゼピン と benzodiazepine の検索数 丨 Google Trends

ベンゾジアゼピン系薬剤 は 1960年代に登場した 鎮静剤・抗けいれん薬・抗不安薬で、過去20年間でそれほど大きく処方数は変化していない。

正確性に劣る

世界では複数の調査会社が、企業の経営報告書をもとに詳細なランキングを作成している。個別の薬剤の売上なども分析していて、この統計は Google Trends より正確な数字になる。

しかし、コストを掛けて作成された資料なので、当然ダウンロードも有料になる。

データの販売先は主にメディアや企業などで、個人がお金を払って入手するにはハードルが高い。

個人ブロガーはどうしても、Google Trends などの無料の情報源に頼ることになる。

収益から見た世界の製薬企業トップ20 、参照元はウィキペディア英語ページ.png (1467×769)
参考画像:収益から見た世界のトップの製薬企業
出典:英語版 Wikipedia

それでも、情報発信の母集団という点からすると、Google の利用者の方が圧倒的に多い。正確な数字の企業統計と比べて、Google Trends はある意味で人々の日常の生活を反映しているといえる。

Google Trends のまとめ

Google Trends には欠点もある。しかし、Google の検索数というビッグデータを個人が手軽に使用できるのは、他にはない大きなメリットがある。

グラフは書き手の主張を的確にして、読者に分かりやすく示してくれる。文字が主体のサイトに赤と青のグラフが加わることで、記事に華やかさも添えられる。

このサイトでは、これからも Google Trends を活用していくつもりである。

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