【Google Trends】 簡単にグラフが作れる便利なサービス
Google Trends は Google の検索数の推移を、グラフで分かりやすく表示してくれる、誰でも無料で利用できるサービスです。今日は Google Trends の便利な点と、その欠点について紹介します。

ポイント
- Google Trends の 紹介
- 世界 と 日本 の比較
- 中国 と Google Trends の 弱点
Google Trends とは?
Google Trends は Google での検索数の推移を、グラフで分かりやすく表示してくれる、誰でも無料で利用できるサービスになる。
Google Trends の使い方はとても簡単で、トップページに行き、検索したいキーワードを入力する。するとすぐにグラフが表示される。

グラフは最も検索数の多かった時を 100 として、相対的な変化を表している。
新薬の発売と検索数
新しい薬が発売されると、検索数も増加する。
新しい睡眠導入剤の デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、日本で 2020年7月6日 に発売された。

参考:デエビゴは、ふらつき少ない安全な薬
発売前の微妙な検索数は、製薬企業の社員や医療関係者が、新薬に興味を持って調べている。
発売後は、薬を処方された・もしくは処方を勧められた患者さんが、情報を求めて検索している。
患者さんの数は医療従事者よりもずっと多い。薬の認知度が上がるとともに、検索数も増えていく。
複数のキーワードの比較
2つ以上の検索ワードを比較することも可能で、検索興味の移り変わりを知ることができる。
試しに2種類の帯状疱疹ワクチン、Shingrix と Zostavax を比較してみる。

参考:2種類の帯状疱疹ワクチン、「シングリックス」「弱毒生ワクチン」についてのまとめ
新しい帯状疱疹ワクチンの Shingrix は、2017年にカナダと米国で最初に承認された。
Shinrix は発売以降大きく検索数が増えている。
一方で、古いワクチンの Zostavax の検索興味が、入れ替わるように少しずつ低下していることが分かる。
英語と日本語
英語と日本語の検索数
英語と日本語の検索ワードを比較することもできる。新しい帯状疱疹ワクチンの「シングリックス」と、その英語表記の "Shingrix" を比較してみる。

すると、全世界の英語の検索数が、圧倒的に日本語を上回っている。
英語は世界で最も使用人口が多い言語で、15 億人 が使っている。2位は中国語で 11 億人、3位は ヒンディー語(インド)の 6 億人 の順になる。
日本語は 1.2 億人 で、13 番目 になっている。
論文の言語
リクルート進学総研 ホームページ
アカデミーの世界では、英語が圧倒的に世界標準語になっている。
日本で執筆される論文の実に 99% 以上は、英語で投稿されている。他のアジア諸国でも同様で、中国と韓国も 99% を超えている。
日本で執筆された論文を探すときも、日本語ではなく英語で探す必要がある。
睡眠導入剤に対する日本の興味
英語の使用人口は日本語よりはるかに多い。しかし最初に紹介した睡眠薬のデエビゴは特殊で、全世界での日本語の検索数が英語を上回っている。これはとても変わった現象になる。

デエビゴを開発したのが、日本のエーザイ社であることが理由の一つにある。しかし、それだけでは説明ができない。
同効薬のベルソムラ(一般名:スボレキサント)は、2014年に発売されている。

ベルソムラを開発したのは米国の メルク社 で、米国で先に発売されている。しかし、それでも日本語の検索数は世界に匹敵したまま続いている。
新規の睡眠導入剤に対する興味が、日本は世界と比べてとても高いことがわかる。
国や地域別の検索興味
このサイトでは触れることは少ないが、国や地域ごとの興味を知ることもできる。「融雪剤」というキーワードは、毎年冬に検索数が増える。
融雪剤の検索興味は、北海道・東北・日本海側で高い。
Google Trends の問題点
Google Trends は、このように手軽に使えるのが便利だが、問題点もある。
Google の シェア は 100% ではない
Google は世界の サーチエンジン で 90% 以上のシェアを誇っている。

シェア | 世界 | 日本 | 中国 |
---|---|---|---|
92 % | 75 % | 3 % | |
Yahoo! | 1 % | 14 % | 0.1 % |
Bing | 3 % | 9 % | 15 % |
計 | 96 % | 98 % | 18 % |
日本のシェアは 75% にとどまるが、2位の Yahoo! は Google のアルゴリズムを使用しているので、実質は 90%以上 になる。
しかし、中国など一部の国は Google の使用を禁止している。
中国のサーチエンジンシェア1位は百度(Baidu 62 %)で、Google は わずか 3 %しかなく、VPN など特殊な方法を使って使用している。
中国の人口は 14 億人 で、世界人口の 6分の1 を占めている。Google Trends では、この部分のデータが欠けることになる。
検索できるのが 2004年以降
Google Trends のサービス開始は 2006年 で、検索できるのは 2004年以降になる。2004年以前に発売された薬の動向などを調べるのには適さない。

ベンゾジアゼピン系薬剤 は 1960年代に登場した 鎮静剤・抗けいれん薬・抗不安薬で、過去20年間でそれほど大きく処方数は変化していない。
正確性に劣る
世界では複数の調査会社が、企業の経営報告書をもとに詳細なランキングを作成している。個別の薬剤の売上なども分析していて、この統計は Google Trends より正確な数字になる。
しかし、コストを掛けて作成された資料なので、当然ダウンロードも有料になる。
データの販売先は主にメディアや企業などで、個人がお金を払って入手するにはハードルが高い。
個人ブロガーはどうしても、Google Trends などの無料の情報源に頼ることになる。

出典:英語版 Wikipedia
それでも、情報発信の母集団という点からすると、Google の利用者の方が圧倒的に多い。正確な数字の企業統計と比べて、Google Trends はある意味で人々の日常の生活を反映しているといえる。
Google Trends のまとめ
Google Trends には欠点もある。しかし、Google の検索数というビッグデータを個人が手軽に使用できるのは、他にはない大きなメリットがある。
グラフは書き手の主張を的確にして、読者に分かりやすく示してくれる。文字が主体のサイトに赤と青のグラフが加わることで、記事に華やかさも添えられる。
このサイトでは、これからも Google Trends を活用していくつもりである。