【脳卒中】 脳卒中は、5年以内に 20% が再発する 丨 久山町研究

脳卒中は再発がとても多い病気です。一度発症した場合、薬を飲んでしっかり予防することが勧められます。今日は、脳卒中はどれぐらい再発が多いのか紹介します。

ポイント

  • 脳卒中 の 5年再発率 は 19.3%
  • 初発が脳梗塞の場合、再発の 86~96% が脳梗塞
  • 初発が脳出血の場合、再発の 67~88% が脳出血

はじめに

脳卒中はどれだけ再発するのだろうか?

脳梗塞 や 冠動脈心疾患 は、動脈硬化によって起こる。一度 脳梗塞 や 冠動脈心疾患 を発症した場合、同じ病気の再発の危険性が高い。

病気の再発を予防することを 二次予防 という。二次予防 について知るためには、まずは病気の再発率を知る必要がある。

今回は脳卒中の再発率を調べた論文を紹介する。

半世紀に渡る、日本の地域社会における脳卒中5年再発リスク変化:久山町研究

Long-Term Trends in The 5-Year Risk of Recurrent Stroke over A Half Century in A Japanese Community: The Hisayama Study

Yasuyuki Nakanishi et al.

J Atheroscler Thromb. 2022 Dec 1; 29(12): 1759–1773.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9881531/
Long-Term Trends in The 5-Year Risk of Recurrent Stroke over A Half Century in A Japanese Community: The Hisayama Study

Long-Term Trends in The 5-Year Risk of Recurrent Stroke over A Half Century in A Japanese Community: The Hisayama Study

Aim: Secular trends in the risk of recurrent stroke have been reported in several epidemiological studies worldwide, but this issue has not been investigated in general Japanese populations. We examined the trends in the 5-year risk of recurrent stroke ...

目的

半世紀にわたる脳卒中の5年再発リスクの変化を調べる

方法

  • 1961年、1974年、1988年、2002年に4つの集団を確立
    • 1961~1971年 1,261名
    • 1974~1984年 2,044名
    • 1988~1998年 2,646名
    • 2002~2012年 3,150名
  • 10年間の追跡期間中に脳卒中を初発した患者を、さらに5年間追跡
    • 1961~1971年 154名(9.5%)
    • 1974~1984年 144名(7.0%)
    • 1988~1998年 172名(6.5%)
    • 2002~2012年 146名(4.6%)
  • クモ膜下出血は発症数が少なかったので、脳出血に含めて解析

一次エンドポイント

脳卒中の再発

二次エンドポイント

総死亡、総死亡と脳卒中の再発の合計

結果

初発の脳卒中の特徴

久山町研究脳卒中の再発の論文の図、初発の脳卒中の特徴のグラフ.png (800×1120)
1961~ 1974~ 1988~ 2002~
10年発症率(%) 9.5 % 7.0 % 6.5 % 4.6 %
発症年齢(歳) 69 歳 74 歳 74 歳 75 歳
男性(%) 56 % 44 % 42 % 50 %
脳梗塞(%) 69 % 75 % 69 % 68 %
脳出血(%) 29 % 25 % 31 % 31 %
論文の表 をもとに作成

初発の脳卒中の発症率は時代とともに減少

初発の脳卒中の発症年齢は高齢化

脳卒中全体に占める脳梗塞の割合は変化せず
脳梗塞のサブタイプでは、塞栓性梗塞の割合が増加し、ラクナ梗塞は減少

再発の脳卒中の特徴

久山町研究脳卒中の再発の論文の図、脳卒中の5年再発率のグラフ.png (800×1120)
1961~ 1974~ 1988~ 2002~
脳卒中全体 40.8 % 31.5 % 20.4 % 26.2 %
脳梗塞 38.0 % 34.5 % 20.0 % 27.1 %
脳出血 59.2 % 15.8 % 21.5 % 24.0 %
論文の表 をもとに作成

脳卒中の再発率は、1990年代までは減少したがその後は変化せず

そのうち、初発が脳梗塞であった場合も同じような傾向

初発が脳出血の場合、再発率は 1970年代まで大幅に低下し、その後横ばい

脳梗塞のタイプでは、塞栓性脳梗塞とラクナ梗塞の再発率は時代とともに減少
アテローム血栓性脳梗塞の再発率は変化せず

初発が脳梗塞であった場合、再発の 86~96% が脳梗塞
初発が脳出血であった場合、再発の 67~88% が脳出血
2000年代では、脳出血の再発よりも脳梗塞の発症の方が多かった

結論

脳卒中の再発は 1960年代~1990年代 にかけて減少したが、最近は変化していない

脳卒中の再発リスクを軽減するには、原因となる血管病変および塞栓源の包括的な評価と管理が必要

筆者の意見

再発率は 6~9 倍!

今回の観察対象全体では、初発の 脳卒中 の 10年発症率 が 6.5% になる。

それに対し、5年再発率は 19.3% と非常に高い。

一番最近の 2000年代 の集団では、初発の 脳卒中 の 10年発症率 が 4.6% になる。

5年再発率 は 19.8% と変化していない。

観察年数を加味して考えると、再発率は初発の 6~9倍 になる。脳卒中がいかに再発が多いか分かる。

一次予防と二次予防

前回まで見てきた、新規の病気を予防することを 一次予防 という。

それに対し、病気の再発を予防することを 二次予防 という。

それぞれの発症率の違いを見ると、一次予防 と 二次予防 で全く違うアプローチが必要になることが分かる。

二次予防は何でもする

一次予防は、リスクの高い人に限って薬を使用する。

それに対し、二次予防では予防に効果のある薬は何でも使う

脳梗塞 の二次予防であれば、血圧の薬・高脂血症の薬・血をサラサラにする薬 の全てを使う。

もちろん、肥満 や 糖尿病 があれば、それらもコントロールする必要がある。

LDLコレステロールを下げる治療は、脳梗塞の再発予防に効果がある。

次回は脳梗塞の再発予防におけるスタチンの効果を見ることにする。

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