【コレステロール】 コレステロール は、脳出血を予防するかもしれない 丨 茨城健康調査
LDLコレステロール は高いと心臓病が増えます。一方で、低いと脳出血が増えます。コレステロールと病気の関係には2面性があり、必ずしも低いほうが良いとはいえません。今日は コレステロール と脳出血との関連を調べた調査を紹介します。

ポイント
- LDLコレステロール が高いと、脳出血が少ない
- 一方で 冠脈心疾患 が増える
- 両方を合わせると、 120~139 ぐらいがちょうど良い
はじめに
LDLコレステロールは、いくつぐらいが良いのだろうか?
男性は LDLコレステロール が上がると、心臓病のリスクが上昇した。女性ではその傾向は無かった。
今回は LDLコレステロール が高いと、脳出血 が少なかったという報告を紹介する。前回と同じ茨城県の報告になる。
LDLコレステロールと脳出血による死亡:茨城健康調査
Low-Density Lipoprotein Cholesterol Concentrations and Death Due to Intraparenchymal Hemorrhage : The Ibaraki Prefectural Health Study
Hiroyuki Noda, Hiroyasu Iso, Fujiko Irie, Toshimi Sairenchi, Emiko Ohtaka, Mikio Doi, Yoko Izumi and Hitoshi Ohta
Circulation. 2009 Apr 28;119(16):2136-45

Low-Density Lipoprotein Cholesterol Concentrations and Death Due to Intraparenchymal Hemorrhage
Background— Few studies have examined the association between low levels of low-density lipoprotein (LDL) cholesterol and risk of intraparenchymal hemorrhage. Methods and Results— A total of 30 802 m
目的
LDLコレステロール と 脳出血のリスクとの関連を調べる
対象
- 冠状動心疾患や脳卒中の病歴のない、40 ~ 79歳 の 91,219人
- 男性 30,802人 と 女性 60,417人
方法
- 1993年の健康診断で、以下の項目を測定
- 身長、体重、血圧、血糖値、血中脂質、降圧薬の有無、γ-GTP、喫煙、飲酒
- 2003年までの県内の死亡診断書をすべて確認
結果
観察期間の中央値は 10.3年
男性 125人(0.4%)、女性 139人(0.2%) が脳出血で死亡
参加者のLDLコレステロールの分布

LDLコレステロールが高い参加者の特徴
- 高齢
- 女性である
- 総コレステロールが高い
- HDLコレステロールが低い など
性別と年齢を調整した脳出血の死亡リスク

LDLコレステロールが高いと、脳出血による死亡のリスクが低い
脳梗塞 や クモ膜下出血 ではこのような関係は認めず

LDLコレステロールが高いほうが総死亡率が低い
一方で、LDLコレステロールが高いと 冠状脈心疾患 による死亡率が上昇
脳出血 と 冠動脈心疾患 を合わせると、LDLコレステロール と 死亡リスク の間に U 字型の関係があり、120~139 のときリスクが最低
結論
LDLコレステロール の低値は、脳出血による死亡のリスク増加と関連している
筆者の意見
前回と同じ調査の結果になるが、LDLコレステロールは高いほうが長生き になっている。これはとても大切なことになる。
LDLコレステロール は低いと脳出血が増え、高いと心筋梗塞が増える。
高すぎも低すぎも良いことはなく、120~139 ぐらいがちょうど良いようである。
今回の調査で冠動脈心疾患 の 死亡数 は 539名(0.6%)、脳出血 の 死亡数 は 264人(0.3%)になっている。
死亡例 は 冠動脈心疾患 が 脳出血 の2倍発生している。どちらかというと、静音率に与える影響は脳卒中より心臓病のほうが大きい。
脳卒中 と 心筋梗塞
脳卒中には、脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血 の3つがある。
一方で、心筋梗塞と脳梗塞は同じ系統の病気になる。
脳卒中
- 脳梗塞 → スタチンで予防
- 脳出血 → スタチンで悪化
心疾患
- 心筋梗塞 → スタチンで予防
LDLコレステロールを下げる治療は、脳出血を増加させるが、心筋梗塞と脳梗塞は減少させる。
LDLコレステロール を下げる治療の是非を検討するには、それぞれの発症率をもう少し知る必要がある。
次回は 冠動脈心疾患 と 脳卒中 の発生数の変化を調査した、「生きた統計」を紹介する。