【メタボ】メタボ は がん の リスク が 1.58倍 !

メタボリックシンドローム は 心臓病や脳卒中だけでなく、がんとも関連しています。今回は、メタボリックシンドロームとがんとの関連を調べた、大規模な調査を紹介します。

ポイント

  • メタボ は がん の リスク
  • がん による 休職 の リスク 1.26倍
  • がん による 死亡 の リスク 1.58倍

はじめに

メタボリックシンドロームは、がんと関係があるのだろうか?

前回は、メタボリックシンドロームと心血管病のリスクについて紹介した。今回はがんとの関連について検討する。

肥満とがんとの関連を調べた研究は数多くあるが、その中でメタボリックシンドロームとがんの関連を調べた、2023年の新しい論文を紹介する。

大企業の検診結果をもとにした、大規模な調査の報告になる。

メタボリックシンドロームと重度のがんイベントのリスク:日本人の労働者を対象とした縦断研究

Metabolic syndrome and the risk of severe cancer events: a longitudinal study in Japanese workers

Dong Van Hoang et al.

BMC Cancer. 2023; 23: 555.

https://bmccancer.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12885-023-11026-7
Metabolic syndrome and the risk of severe cancer events: a longitudinal study in Japanese workers - BMC Cancer

Metabolic syndrome and the risk of severe cancer events: a longitudinal study in Japanese workers - BMC Cancer

Background Metabolic syndrome (MetS) is associated with cancer risk; however, little is known regarding its relationship with the risk of cancer-related premature death and long-term sick leave (LTSL), which can lead to a substantial loss in working years.

大企業の健診結果をもとに、メタボとがんとの関連を調査

目的

がんによる長期休職と死亡は企業に損失を与える
日本の労働人口のメタボリックシンドロームとがんとの関連を調べる

対象

  • 12社の大企業に所属する 20~60歳 の従業員 70,875人
  • 男性 59,950人、女性 10,925人

方法

  • 健康診断で下記の項目を測定

今回の研究のメタボリックシンドロームの診断基準

本研究の診断基準
腹部肥満 腹囲 男性 90cm 以上 女性 80cm 以上
血糖 空腹時血糖 100以上 or 糖尿病の薬を使用
血圧 130 / 85 以上 or 血圧の薬を使用
中性脂肪 150以上 or 脂質低下薬を使用
HDLコレステロール 男性 40未満 女性 50未満

上記の項目が 3つ 以上の場合、メタボリックシンドロームと診断

一次エンドポイント

  • がんの発生
  • がんによる長期休職(連続30日以上)

二次エンドポイント

  • 特定の部位のがん

結果

研究は 2011年(10社)と 2014年(2社)に開始
2020年3月 まで追跡調査

参加者の特徴

メタボ 非メタボ
人数 12,059 人 58,816 人
現在も喫煙 39.1 % 32.2 %
心血管病の既往 2.3 % 0.8 %
精神疾患の既往 2.0 % 1.4 %
論文の表 をもとに作成
メタボとがんの論文、参加者の特徴.png (800×1120)

メタボリックシンドロームは、高齢者、男性、肥満、喫煙者に多い

メタボリックシンドロームの人は、がん・心血管疾患・精神疾患の既往が多い

がんの発生

追跡調査中に、523人が重度のがんイベントを経験

  • がんによる長期休職 493人
  • 長期休職後に死亡 124人
  • 長期休職を経ずにがんにより死亡 30人

メタボ によるがんのリスク

メタボとがんの論文、メタボとがんのリスク.png (800×1120)
長期休職 + がんによる死亡
全部位がん 1.28 倍
すい臓がん 2.06 倍
がんによる死亡
全部位がん 1.58 倍
論文の表をもとに作成

メタボがあると、がんによる長期休職または死亡のリスクが 1.28 倍

膵臓がんに限ると 2.06 倍

メタボがあると、がんによる死亡リスクが 1.58 倍

メタボ の 構成要素とがんのリスク

メタボとがんの論文、メタボ構成要素の数とがんのリスクのグラフ.png (800×1120)
構成要素 長期休職 + 死亡 死亡
1つ 1.43 倍 1.78 倍
2つ 1.58 倍 1.75 倍
3つ 1.64 倍 2.36 倍
4つ以上 1.84 倍 2.57 倍
論文の図をもとに作成

メタボリックシンドロームの構成要素が増えると、がんのリスクも増加

結論

日本人労働者では、メタボリックシンドロームは、がんのリスクと関連

メタボリックシンドロームの構成要素が増えると、がんのリスクも増加

筆者の意見

大規模な検診データの分析で、研究参加者の数が多いので信頼できるデータになる。

参加した企業は、論文から読み取れる限り以下の企業が含まれていた。

  • 日立製作所
  • 三井化学
  • ヤマハ株式会社
  • 日本製鉄
  • JFEスチール
  • 古河電工
  • 三菱ふそう
  • クボタ

残り4社はわからないが、いずれも日本を代表する大企業になる。

女性のがんについて

参加した企業の業種による背景と考えられるが、今回の研究では男性が 85% と大部分を占めている。

女性の参加者が少なく、乳がん・子宮がん・卵巣がんなど、女性固有のがんについては、十分に検出できていないことに留意する必要がある。

がんの診断について

がんの診断は、労働者から提出された診断書をもとにしている。

注意すべき点として、がんを発症した全員が会社に診断書を提出したわけでは無いことが挙げられる。

日本人の心理として、職場にがんを知らせることを避けたケースもあったと思われる。

実際のがんの発生数は、もっと多い可能性がある。

メタボリックシンドロームの定義

メタボリックシンドロームの定義は今回の研究独自のもので、米国の NCEP-ATPⅢ という定義を基準に、腹囲を日本人に適した値に修正して用いている。

病気と関連したデータが得られているが、日本のメタボリックシンドロームの診断基準と違っているので、一般化が少し難しい。

次回はメタボから少し離れて、年齢と最適な体重について検討する。

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